台湾「慰安婦」像足蹴事件は、右派団体による「歴史戦」のひとつにすぎない

初出:wezzy(株式会社サイゾー)2018年11月13日

 

の右派団体「慰安婦像の真実国民運動」幹事の藤井実彦氏が、台湾に初めて設置された「慰安婦」像に蹴りを入れているように見える姿が監視カメラの映像から発覚した事件を覚えているだろうか。この「慰安婦」像は2018年8月に中国国民党台南市支部によって設置されたもので、藤井氏らはこの像の即時撤去を求め、9月6日、同支部に公開質問状を手渡す目的で台湾を訪れていた。

 当初は蹴りを入れたというのは全くの捏造だと主張していた藤井氏は、動画が公開されると「ストレッチをしただけであり、蹴っていない」などと釈明する。しかし、同じく捏造を主張していた「慰安婦の真実国民運動」は、9月12日に代表の加瀬英明名で 「藤井氏が慰安婦像を蹴るようなそぶりをしたことは明らか」とする、謝罪文を発表。藤井氏は9月11日付で同会の幹事を辞任している。

 一方、同会は国民党への公開質問状に関しては取り下げていないし、11月6日付で、再度回答を求める要求文書を送付している。また、藤井氏は現在(2018年11月12日)も自らの非を認めていない。藤井氏が幹事を辞任した後に更新された「慰安婦の真実国民運動」のサイトでも未だに藤井氏が代表を務める「論破プロジェクト」が加盟団体として記載されていることから、藤井氏の同会への関わりは続いていると考えられる。

 「慰安婦の真実国民運動」は、これまでも「慰安婦」問題を巡る国内外での「歴史戦」に関わってきた。先月10月には、「慰安婦映画上映会を茅ヶ崎市が後援したことについて、茅ヶ崎市長、教育長と会場の茅ヶ崎市民文化会館に対して申入書を送り、市民に抗議を呼びかけるなどして騒動を起こし、自民党市議団が市に抗議を行うという展開が起きたばかりだ。そして、同会や藤井氏が、国際問題を引き起こしたのも今回が初めてではない。

 本稿では、「慰安婦の真実国民運動」や関連する右派団体が特に海外でいかに「歴史戦」を繰り広げてきたのかをまとめたい。今回の騒動は、藤井氏や「慰安婦の真実国民運動」に限定されない、日本政府や政治家をも含めた、大きな流れのひとつであることがわかるだろう。

慰安婦の真実国民運動とは

 2011年12月、ソウルの日本大使館前に「平和の少女像」が設置されて以来、続々と海外に建設される「慰安婦」の碑や像は日本政府や日本の右派の批判の的になった。また月刊誌『正論』2012年5月号(4月発売)に、ジャーナリストの岡本明子氏が、2010年に設置されてから特に大きな注目を浴びてこなかった、アメリカニュージャージー州パリセイズパーク市の「慰安婦」の碑が設置されたために米国で日本人がいじめ被害にあっていると主張する「米国の邦人子弟がイジメ被害 韓国慰安婦反日宣伝が蔓延する構図」と題した記事を寄稿すると、在ニューヨーク日本総領事館が市に対して碑の撤去を要求した。さらに5月、古屋圭司山谷えり子議員ら四人からなる自民党議員団が同市を訪問し、碑の撤去を要求した。こうした動きがニューヨークタイムズの記事となり、碑が大きな注目を集めることになった。

 その後、「慰安婦」碑や像の建設計画のたびに、日本から大量の抗議メールが送られ、日本政府も阻止に向けて動くという事態が続いている。民間の運動として、海外での「慰安婦」の碑や像建設への反対の動きを牽引したのが、ソウルの日本大使館前に「慰安婦」少女像が設置された2011年末に本格的な活動を開始した女性団体「なでしこアクション」だった。代表は、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の元副代表・事務局長だった山本優美子氏だ。

 2013年には、ロサンゼルス近郊のカリフォルニア州グレンデール市に、全米で初めて、ソウルの日本大使館前に設置されているものと同じ「平和の少女像」が設置された。設置決定前の公聴会には、在米日本人右派らが参加し、日本の右派の注目を集めた。

 このグレンデールの少女像が大きなきっかけとなり発足したのが「慰安婦の真実国民運動」だ。設立の日付は、少女像の除幕式が行われた7月30日の1日前に当たる。同団体設立当時の幹事長、松木國俊氏は、「アメリカ在住の同志とも連絡を取り合って、「慰安婦の碑」建設反対の大運動を展開します」と述べ、海外の「慰安婦」問題に関する「歴史戦」への対抗ということを強調した(新しい歴史教科書をつくる会『史』2013年9月号 p.27)。

 同会はもともと「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、「つくる会」)が呼びかけ、立ち上げた組織だという。現在、「慰安婦の真実国民運動」の代表は加瀬英明、幹事長が岡野俊昭、さらに常任幹事には松木國俊藤岡信勝の各氏が名を連ねている。彼らは全員、「つくる会」に属しており、同会の事務局も「つくる会」内に置かれており、事務局長も「つくる会」の事務局長が兼任という状態である。「慰安婦の真実国民運動」のサイトによれば、現在同会は「20団体が参加する協議会」であり、以下が加盟団体として挙げられている。

アジア自由民主連帯協議会 (ペマ・ギャルボ会長)
新しい歴史教科書をつくる会 (高池勝彦会長)
生き証人プロジェクト (代表不明)
英霊の名誉を守り顕彰する会 (佐藤和夫代表)
GAHT-US Corporation 歴史の真実を求める世界連合会 米国事務局(目良浩一会長)
GAHT Japan NPO法人歴史の真実を求める世界連合会 日本法人 (加瀬英明会長、目良浩一、藤井厳喜代表)
史実を世界に発信する会(加瀬英明代表、茂木弘道事務局長)
「真実の種」を育てる会(岡野俊昭運営委員長、加瀬英明高池勝彦杉田水脈ら顧問、藤岡信勝藤木俊一ら運営委員)
そよ風(涼風由喜子会長)
正しい歴史を伝える会(桂和子代表)
調布『史』の会 (松木國俊世話人
テキサス親父日本事務局(藤木俊一事務局長)
なでしこアクション(山本優美子代表)
日本近現代史研究会 (杉原誠四郎会長)
日本時事評論 (山本和敏社長)
捏造慰安婦問題を糺す日本有志の会(代表不明)
捏造日本軍「慰安婦」問題の解決をめざす北海道の会(澤田健一代表)
不当な日本批判を正す学者の会(田中英道会長、山下英次事務局長)
誇りある日本の会 (吉田明彦相談役)
論破プロジェクト(藤井実彦代表)

 「つくる会」や「日本時事評論」など少数を除いては、2010年頃以降に発足した団体が大部分だ。20という加盟団体数から大規模な連絡会のように見えるが、各地に支部を持つ組織は少なく、小規模の団体が多い。また、役員やメンバーが重複していることもある。

  台湾で問題を起こした藤井実彦氏が代表を務める「論破プロジェクト」は、2013年8月14日、藤井氏がYahoo!ニュースでみた「フランスのアングレーム漫画祭に韓国政府が50本の慰安婦漫画を展示するという暴挙に、経営者としての仕事を捨ててでも、対抗する必要があると考え」たことから発足させたという。漫画祭向けの「慰安婦」を否定する内容の漫画作品を出品、展示しようとしたものの、2014年1月に開催された漫画祭では主催者に展示ブースを撤去されるという顛末になった。

 この「論破プロジェクト」を後援していたのが幸福実現党だ。藤井氏は幸福の科学媒体『The Liberty Web』にも頻繁に登場して、「論破プロジェクト」の活動について語っており、漫画祭に出品した漫画の中にも幸福の科学のマスコット「トックマ君」が登場している。

台湾「慰安婦」像足蹴事件は、右派団体による「歴史戦」のひとつにすぎないの画像2アメリカ・カリフォルニア州ブエナパーク市に届いていた「論破プロジェクト」の漫画。右側の表紙には、「トックマ君」が描かれている。(撮影 山口智美)

 アングレーム漫画祭には、藤井氏に加え、Youtuberの「テキサス親父」ことトニー・マラーノ氏と「テキサス親父日本事務局」の藤木俊一事務局長も同行し、これ以降、マラーノ氏と藤木氏が「慰安婦」問題への関わりを深めることになった。2014年には、「論破プロジェクト」は「テキサス★ナイト」と題されたマラーノ氏の講演ツアーを日本で企画、主催している(その後も同ツアーは2015、2017年にも開催)。

 こうした様々な団体の連絡組織として設立された「慰安婦の真実国民運動」は、「慰安婦」像や碑の阻止や、海外での集会などの開催、ジュネーブやニューヨークで開かれる国連会議への代表団への派遣など、海外での活動に活発に取り組むようになっていった。

 「慰安婦の真実国民運動」は、ブログ、SNSや動画サイトなどを積極的に活用して、派手な運動を展開した。例えば、アングレーム漫画祭参加の前、2013年12月には、藤井、マラーノ、藤木の三氏でグレンデールの少女像を見学に行っており、その際にマラーノ氏が少女像の頭に人の顔が落書きされた紙袋を「慰安婦はブスだから」などといってかぶせ、笑い者にして写真を撮影、ネット配信し、それが韓国で炎上したことがある。藤木氏によれば、グレンデール市の少女像撤去の署名を集める目的であえて写真をネットに拡散し、韓国で炎上することを狙ったのだという。

 このように、藤井氏らはネットでの炎上を狙い、差別を煽り、結果として、国際的に批判を浴びる事態を何度も引き起こしてきた。台湾での事件も、こうした彼らの日常の活動の一環に過ぎない。そして、彼らの活動はネットのみならず、『産経新聞』や『夕刊フジ』、『月刊正論』などの産経系メディア、『WiLL』や『ジャパニズム』などの右派月刊誌や、「つくる会」や幸福の科学などの媒体を通しても伝えられてきた。「慰安婦の真実国民運動」の運動に関わってきた杉田水脈氏やマラーノ氏らは産経や夕刊フジに連載も持っており、日常的に彼らの活動ぶりがマスメディアに掲載され、それがネットで拡散されるという状況だった。

  2014年頃から、「慰安婦の真実国民運動」とは別の流れとして、主流の保守団体である「日本会議」も北米での「歴史戦」を展開している。特に日本会議東京地裁朝日新聞社を訴えた「朝日グレンデール訴訟」の全面支援を通して北米で原告を探した。また、ロサンゼルスやニューヨーク、トロントなどで集会などを開催し、在米日本人右派を着実に組織してきた。

 「慰安婦の真実国民運動」の関係者や関係団体で、日本会議など主流保守団体にも所属したり関係したりしているケースはある。「慰安婦」問題に関する主張はそう変わらず、時に行動を共にすることはあった。だが、「慰安婦の真実国民運動」関係者は、裁判闘争としてはアメリカでは「GAHT」によるグレンデール市を米国の裁判所で訴えた裁判、日本ではチャンネル桜系の運動体「頑張れ日本!全国行動委員会」などが主体となった「朝日新聞を糺す国民会議」の集団訴訟を支援しており、完全に日本会議と共闘しているという状況でもない。また、「慰安婦の真実国民運動」は外務省が十分「歴史戦」を戦っていないとして批判したり、2015年の「日韓合意」も批判するなど、日本会議系の主流保守より、政府や自民党を批判することが多かった。

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「性暴力を禁止する法律を育てていく」/あらゆる性差別を禁じる“Title IX”のコーディネーターに聞く、アメリカの今

初出:wezzy(株式会社サイゾー)2017年2月23日

 

昨年は、東京大学慶應大学近畿大学千葉大学などで起きた、大学生による悪質な性的暴行事件が報道された。発覚した事件は氷山の一角だとも思われ、キャンパス・レイプ事件への大学の対応も問われる状況となっている。

キャンパス・レイプはアメリカでも深刻な社会問題となっている。キャンパス・レイプを巡る、警察、司法、そして大学の対応の問題をえぐり出したジョン・クラカワーの『ミズーラ』(亜紀書房)は、アメリカでベストセラーとなった(多発するキャンパス・レイプ 「レイプの首都」と呼ばれたアメリカの大学街で起きた普遍的な性暴力を巡る問題)。

アメリカには、1972年に制定された教育改正法第9編(以下、Title IX)という、連邦が財政支援をする教育プログラムや活動における性差別の禁止を規定した法律がある。オバマ政権下の2011年、教育省公民権局が、Title IXに定められた「性差別」は、学生同士の性暴力やセクシャル・ハラスメントも含むと明確に示した教育関係者向けの「同僚への書簡」(Dear Colleague Letter)を出したことで、教育現場における性暴力対応が大きく変わった。また司法省と教育省は連名で、トランスジェンダーの学生に関する「書簡」を2016年に出した。これによってTitle IXは性自認やトランスジェンダーであることに基づく差別をも含むとし、トランスジェンダーの学生が教育を受ける上で不利益を被らないためのガイドラインが提示された。

現在、トランプ政権下のアメリカでは、女性や性的マイノリティ(LGBT)の人権に関する様々な政策への反動が懸念されているが、Title IXが関係する学校での性暴力撤廃への動きも、トランスジェンダーの差別撤廃の動きも後退するのではないかと不安視されている。

オバマ政権時代にTitle IXに関して、アメリカの大学では具体的にどのような変化があったのだろうか。また、現在の課題はどのようなものなのだろうか。トランプ政権のもとではどうなってしまうのか。私の勤務校であるモンタナ州立大学モンタナ州ボーズマン市)のTitle IXコーディネーター、ジル・シェーファーさんに、トランプ政権に移行する直前の昨年12月にお話を伺った。シェーファーさんは大学のOffice of Institutional Equityという、差別やハラスメントなどに対応する部署のディレクター。性差別のみならず、他のあらゆる差別に対応する仕事を担当しているが、今回はTitle IX関連、特に性暴力対応に焦点を当てる。

 

オバマ政権下でのTitle IX

オバマ政権は「同僚への書簡」の後も、2014年にキャンパスでの性暴力に関してホワイトハウスのタスクフォースを作るなど、積極的に大学での性暴力問題の対応を行った。アメリカでは連邦の財政支援を一切受けていない大学というのは少数の例外を除いてほとんどなく、全米の大部分の大学にTitle IXが適用されるため、政権による一連の対応が与えた影響は甚大で、大半の大学で性的暴行の訴えに対応する方針や制度を変えなくてはならなくなった。

まず2011年の「書簡」によって、性差別のみならず、性暴力、セクシャル・ハラスメント、ストーキング、親密な関係間の暴力(デートレイプやDVなど)その他のすべての性的な違法行為がTitle IXの範疇だと示された。そして、大学で雇用されている人たちは、学生の性差別や性暴力、セクハラなどの被害について聞いた場合、迅速に(24時間以内に)Title IX担当者に報告するのが義務と定められた。被害当事者が報告をためらったり、迷っている場合でも、事件を聞いた教職員には報告義務がある。教員のみならず、学長、事務方や寮の学生アシスタント、清掃担当者まで、フルタイム、パートタイムや客員などのステータスに関わらず、大学に雇われている人たちは全員が同じように報告義務を負う(例外は秘密保持義務が関わる医療関係者やカウンセラーなどのみ)。そして、性暴力やハラスメントに関する全教職員向けのトレーニングも必修となった。

さらに、性暴力事件の報告を受けた大学は、捜査を迅速に開始し、進めなくてはならないとも定められた(裁定には60日間の期限が推奨された)。このため大学は、性暴力の訴えがあった後、しばらく対応をせず放置しておくとか、警察の捜査の結果を待ってから調査をするなどはできなくなった。そして、刑事司法制度において使われる「合理的な疑いを挟む余地がない」の基準、すなわち事件が起きたかどうかについて、疑いが残る場合には事実認定ができない、いわゆる「疑わしきは罰せず」という基準ではなく、民事訴訟で適用される「証拠の優越」(preponderance of evidence)という、より低い立証ハードルの基準が大学内での性的暴行事件認定において使われることを義務付けた。要するに、この「書簡」以降、被疑者が罪を犯した疑いの方がより強ければ、訴えられた側の責任を問える制度になった。レイプという犯罪を行った学生が罪を逃れるケースを減らすため、軽い立証責任としたのだ(クラカワー『ミズーラ』p.255)。

2011年の「書簡」の内容は、ブッシュ政権時の2001年に教育省から出された指針とそう大きく違う内容ではなかったとシェーファーさんは言う。だが、2011年は、政権の取り組みの真剣度に加え、学生たちの性暴力反対の運動の広がりなどの要素もあり、2001年に比べて影響力が大きかった。シェーファーさんは「Title IXは使う人たちが育てる法律だと思う」として、学生たちの運動や、名乗り出たサバイバーたちの役割の大きさも強調した。また「ついつい日々この仕事をする中で、まだまだ課題が大きいと思ってしまいがちだけれど、考えてみたらこの5年での大学での変化はすごく急速なものでした。大学という組織は通常、変化は遅々としたものなのですが、Title IXに関しては当に変化が大きかったと思います」ともシェーファーさんは語っている。

 

もし学生が性暴力の被害にあったら?

2011年の「書簡」以降、全米の大学で多くのTitle IXコーディネーターが雇われることになった。シェーファーさんもその時からTitle IXコーディネーターとしての仕事を他大学で始めたという。

Title IXコーディネーターは、学生が被害を報告しやすい、信頼できる環境を作るとともに、被害者が授業やカウンセリング、そのほかの助けを求めている場合には、様々な部署や教職員と連携を取りつつサポートする。さらに、Title IXコーディネーターは、通常の性暴力やハラスメントの被害者支援活動とも少し異なり、被害者一人のサポートに限定されず、大学や、その中の組織や場所などのコミュニティも視野におき、コミュニティそのものが安全な場になるようにする仕事でもあるという。

実際、学生が被害にあった場合、どういうプロセスを経るのか。モンタナ州立大学の場合について、シェーファーさんに聞いてみた。

1.被害学生の話を聞き、正式に告発を希望された場合は書類を作成する。
2.訴えられた側に知らせがいき、Title IX担当のオフィスによる調査が行われる。訴えた側、訴えられた側双方や証人の話を聞き、セキュリティカメラの映像、ソーシャルメディアでの発信、写真やビデオがあるならその検証など、ありとあらゆる方向から調査を行い、記録する。
3.Title IXオフィスが結論を出し、両側に知らせる。その後、訴えた側、訴えられた側双方に、再度回答の機会がある。
4.Title IX担当オフィスがさらなるアセスメントを行い、最終的な結論を出す。その後で訴えた側、訴えられた側に決定とその理由を知らせる。結論への抗議(アピール
は訴えられた側のみならず、訴えた側もすることができる(これは2011年の「書簡」で要求された点だ)。
5.結論が確定し、加害があったと認定されたら、被害者個人、及びコミュニティにとって二度と同様なことが起きないように、加害者に罰則を与える。裁定の最大の罰則は退学となる。

なお、一連の調査や決定は、警察の捜査とは独立してTitle IXオフィスにより行われる。適用される基準が異なることもあり、決定が司法刑事制度による判決と異なることもありうる。

私は、ミシガン大学の大学院生の時にストーキングの被害にあったことがある。1990年代で、Title IXに性暴力もストーキングも含まれてはいなかった時代だ。その時には、ミシガン大学の「学生行動規範」に基づき私が原告として訴え、学内裁判のような審問(ヒアリング)のプロセスを経て、被告側の学生への処分決定が出た。私の場合は裁判長役のロースクールの教員が決定を下す方法となったが、裁判員システム的な方法を使う場合もある。クラカワーの『ミズーラ』では、「学生行動規範」のもとでの大学裁判所での審問を通じて、被害者への二次被害がこれでもか、これでもかと積み重ねられていく様子が描かれていたが、当時のミシガン大学の「学生行動規範」による制度にも審問が含まれており、同様の事態が起きうる。私自身、審問の間、被告側の学生(加害者)とは同室にいなくてはならず、さらに質問にも答える必要が、相当の緊張や恐怖を強いられる経験だった。

2011年の「書簡」は、以前はほとんどの大学で実践されていたという、告発者への反対尋問を行わないことを強く推奨した。シェーファーさんによれば、今もまだ「学生行動規範」モデルを使っている大学もあるが、その数はだいぶ減ったという。例えば現在のモンタナ州立大学では、コーディネーターの指揮のもとにTitle IXオフィスがすべての調査を行い、告発した側、された側が同席する審問は行わずに結論を出す。

私がストーキング被害にあった際には自ら大学警察、市の警察、隣の市の警察など複数の警察や、大学内でも複数のオフィスに連絡せざるを得なかった。また、被害者が複数いた事件だったため、同じ大学のみならず、近隣の様々な街や隣町の大学にも広がっており、被害届が別の警察署に出され、横の連携が取れないという問題もあった。そもそもストーキングなどの犯罪は、必ずしも大学キャンパス内で起きるのみならず、どこでも起きうるものだ。シェーファーさんに聞いてみると、現在のTitle IX担当者は、そうした様々な関連機関の連携を担う役割をも担っているという。被害者にとって、同じ自らが被害にあったストーリーを何度も繰り返し違う人たちに説明をするということだけでも、ストレスが溜まる経験であり、二次被害ともなりうることだからだ。

クラカワー『ミズーラ』で描かれたモンタナ大学(モンタナ州ミズーラ市)で2012年に発生したレイプ事件の場合、2011年の「書簡」送付から半年も経っていなかったため、大学側が立証責任の新基準を学生行動規範に反映するのが遅れており、どの証拠基準を採用するかで混乱があった。また、州の高等教育局も「書簡」で定められた「証拠の優越」基準を無視するなど、制度があまりに整っておらず、問題がある対応が目立った。その後、ミズーラのモンタナ大学にはメディアが注目し、米国司法省の調査が入るなどもあり、制度の変更を余儀なくされた結果、性的暴行対応の制度は大幅に改善されたと、現役の同校教員は語っている。

トランスジェンダーに関する「書簡」

もう一つ、オバマ政権が大学キャンパスに与えた大きな影響は、LGBTへの差別撤廃への動きだった。2014年、オバマ大統領は、職場におけるLGBTの差別を禁止する大統領令を発行。そして、 2016年には、教育省公民権局と司法省公民権局が連名で、トランスジェンダーの学生に関する書簡(Dear Colleague Letter)を出した。学生の性自認やトランスジェンダーであることに基づく差別もTitle IXが禁止した性差別の範疇だとしたのだ。

例えば学校は、学生が望む性自認に合わせて、大学関係書類を発行したり、学生が望む性別の代名詞を使って呼ばれるようにすること、またトランスジェンダーの学生の性自認にあった、トイレやロッカールームなどの設備を使える環境を整えることなどが必要だとした。シェーファーさんはこの書簡をとても充実したものだと高く評価するが、その反面、ほとんどの大学はこの書簡の内容に従う準備が追いついておらず、反発や混乱も大きかったともいう。

こうしたオバマ政権の一連の政策により、大学におけるLGBTに関する対応は大きく変わった。さらにそれとともに、あるいはこうした動きをリードした形で、大学キャンパスにおけるLGBTの学生たちの積極的な運動が与えた影響は多大で、モンタナ州立大学も全く例外ではなかった。ちょうど私がモンタナ州立大学にきてすぐにオバマが大統領に就任したが、この8年間、LGBTの学生団体が大学や市、地元メディアへの働きかけなどを積極的に行い続け、LGBTをめぐる状況は大きく変化した。

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多発するキャンパス・レイプ 「レイプの首都」と呼ばれたアメリカの大学街で起きた普遍的な性暴力を巡る問題

(初出:wezzy(株式会社サイゾー)2016年12月17日)

 

 

モンタナ州第二の都市、人口7万人の街ミズーラ。ここにあるモンタナ大学のアメリカン・フットボール(アメフト)チームの選手らが引き起こした複数のレイプ事件が地元紙に報道され、大学はレイプ・スキャンダルで大騒ぎとなった。2012年には、数十件のレイプ事件対応に不手際があったという疑いで米司法局による、モンタナ大学、ミズーラ市警やミズーラ郡検事局への捜査が入ったことで、より大きな注目を集め、ミズーラは「レイプの首都」などと呼ばれるようにもなった。

 9月に翻訳出版された『ミズーラ』(亜紀書房)は、ミズーラで起きたレイプ事件の被害者、関係者、裁判の展開から見えてくる、アメリカにおけるレイプ神話や対応する大学、警察、司法の問題を、ベストセラー作家のジョン・クラカワーが詳細かつ丹念な取材に基づいて描くノンフィクションである。アメリカではここ5年ほど、ミズーラなどでのレイプ事件がきっかけとなり、キャンパス・レイプが深刻な問題として認識されるようになっていた。書も2015年に出版されると大きな話題を呼び、ベストセラーとなった。

 私は同じ州内の、ミズーラから車で3時間ほど離れたボーズマンにあるモンタナ州立大学の教員である。ミズーラのモンタナ大学と、ボーズマンのモンタナ州立大学は同じモンタナ州立の大学システムに属しており、いずれも州内で随一の規模を誇る総合大学だ。アカデミックな意味でも、アメフトなどのスポーツにおいても、ミズーラのモンタナ大学の最大のライバルがボーズマンのモンタナ州立大学という関係性にある。あらゆる意味で似た大学であり、本書に描かれたキャンパス・レイプをめぐる問題は、私自身の大学でも起きうることだ。だがモンタナ州で特有な出来事でもない。アメリカのどの大学や街でも、あるいは日本でも起きている、普遍的な性暴力をめぐる問題をえぐり出している

ミズーラでのレイプ事件の普遍性

 本書の英語版のタイトルは『Missoula: Rape and Justice System in a College Town』、直訳すれば、「ミズーラ:ある大学街で起きたレイプ事件と司法制度」となるが、日本語版の副題は「名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度」となっている。ここで付け加えられた「名門大学」という言葉は全く不必要だろう。「ミズーラ」がアメリカのどこにでもある大学街で、モンタナ大学もごく普通の州立大学で、なんら特殊なことはないというのが重要な意味を持つからだ。

 「レイプの首都」とまで呼ばれたミズーラだが、実際には「ミズーラはこの国のレイプの首都ではなく、むしろ実際には、性的暴行の発生率が全国平均よりわずかに低い」(475-6)という。本書を読むと、これでもかこれでもかというほどに、次々に悪質な性的暴行事件が起きているという印象を受けるが、実際これでも平均より少ないくらいなのだ。

 もちろん、ミズーラという土地柄も関連はする。例えば、人口7万人の小さな大学街であることから、レイプをでっち上げたなどの被害者非難の噂話が広がりやすい。「他の誰もが事情を知っている小さな街と感じられる」(240) と被害者の一人がいうように、被害者がなおさらに辛い状況に置かれるという面はあるだろう。

 また大学のアメフトのチーム(グリズ)の持つ意味合いが非常に大きいという面も無視できない。選手は街のヒーローであり、大学にとっても、市にとっても、人気のアメフトチームがもたらす経済効果は絶大だ。結果、選手らは大学や市民から守られ、特権意識を持つようにもなる。さらにクラカワーは触れていないが、モンタナ州内で法科大学院を持つのがミズーラのモンタナ大学だけであり、結果として法曹関係者がモンタナ大学出身者で占められてしまう傾向も影響しているのではないかとも思う。多くの市民が大学やアメフトチームを守りたいのだ。このような大学街は全米のどこにでもあり、大学やそのスポーツチームがその街や市の主要な収入源として経済効果をもたらすというのもよくあることだ。

 そしてモンタナ大学は、突出してレイプ事件の対応に問題があった大学でさえもない。性的暴行やセクシュアルハラスメントなどに関して、教育改正法第9編(Title IX)の規定に基づき、連邦政府が大学の取り扱いに不手際があったとして捜査を行なったケースは349にものぼっており、そのうち解決したのは57件にすぎない。この調査対象になっている大学は、アイビーリーグなどの私立大学や規模の小さいリベラルアーツ大学、州立大学からコミュニティカレッジに至るまであらゆる大学が含まれている。本書に書かれていることはミズーラのモンタナ大学だから起きたことではないのだ。

守られる加害者と責められる被害者

 2010年から2012年にミズーラで起きた複数のレイプ事件が詳細に説明される中で、書は「レイプ神話」の存在と現実との乖離を鮮やかに浮き彫りにする。見知らぬ人が暗闇から襲ってくるというよくあるイメージとは対照的に、レイプは顔見知りによるものが80%以上を占める。そして顔見知りによるレイプが特に訴追される可能性が低く、さらに連続犯も多い。だが、そうしたレイプ犯は問題ある人たちとは思われず、本人すらもレイプをしたという自覚がなく、相手女性のことを気にかける必要をそもそも感じていないため、自分勝手に合意したと思い込んでいたり、同意を撤回されても平気で無視したりしている。また、被疑者の周りの人たちも、「レイピストになるには彼は思いやりがありすぎ」「将来のある青年」などとしてレイプの事実を否定しようともする。

 本書で詳述される、モンタナ大学のアメフトチームの選手をめぐる複数の事例では、加害者は友人たちからも、大学からも、さらには市民らからも守られる。例えば2012年、モンタナ大学のアメフトチームのクオーターバック(アメフトのスターポジション)の選手がレイプの疑いで逮捕され、のちに法廷で無罪判決になり、大学からの除籍もされなかった事件では、モンタナ大学のアメフトチーム、体育局、モンタナ州ともに被疑者を必死で守ろうとした。アメフトチームに至っては、性的暴行の問題がアメフトプログラムと自分たちのキャリアに悪影響を及ぼしているという被害者意識が前面に打ち出され、被害者を心配する言葉が完全に欠落した声明までも発表した。

 加害者が必死で守られる反面、被害者は、告発した途端に、友人、大学、警察、検察、法廷や、地域での噂話、ネット上など、あらゆるところで疑われ、攻撃にさらされる。なぜ逃げなかったのか、声をあげなかったのか、喘ぎ声をあげていたから楽しんでいたんだろう、なぜ被害を受けてすぐ警察に言わないのか、証言に矛盾があるではないか、遊んでいるから仕方ないのではないか、彼氏を裏切ったからレイプだと嘘をついているのではないか……様々な疑いを向けられるのだ

 クラカワーは当事者や周りの人々の証言、書類、裁判の展開や、アカデミックな文献などあらゆるソースを使って、真相を解きほぐしていく。

 被害者の記憶が直線的でなく漠然としていたり、矛盾があることも普通で、性暴力の被害にあっている最中に叫べなかったり、逃げられないのもよくあることだ。また、ショックやトラウマがあまりに大きいため、証拠となるシーツを破棄するといった不可解な行動を取ってしまったり、レイプ直後はうまくコントロールできていると思い込もうとして、空白時期が生じたりもする。

 一方で「合意の有無」が問題とされる場合、加害者サイドのストーリーが採用されがちという問題がある。例えば共に酩酊状態にある場合は訴追が困難とされたり、途中で女性が拒絶した場合も「合意がない性交だと十分に示すことができなかった」として訴追されなかったりする。酩酊状態にあった女性が途中で多少の意識を取り戻していた場合も、合意がないとは言い切れないとされる。被害者の女性は徹底的に疑いに晒されるのに、加害者男性は疑わしきは罰せず、となるのだ。

 本書はこういう辛い事態に陥ることを覚悟して、それでも告発した人たちの思いを丁寧に描き出す。複数の被害者たちが述べているのが、「自分が告発していたら、これ以上のレイプを防げる・防げたかもしれない」という思いだ。性的暴行の被害を受けたことにとてつもない自責の感情を持ってしまったり、きっと自分は乗り越えて忘れられるとも思いこんだり、でもやはり許せない、といった被害者の揺れる想いも描かれる。そして、そこまでの勇気を持って告発した被害者がのぞんだ裁判の展開をクラカワーは詳細に記述するのだが、被害について具体的、詳細な質問の連続で、かつ被告側弁護士からは被害者の人格をも批判され、読むのも辛い場面が続く。だがこれにより、本書でクラカワーが目指す「これほど多くのレイプ被害者が警察に行くのをためらう原因は何なのかを理解すること、そして被害を受けた人々の観点から性的暴行の影響を認識すること」(10)がひしひしと伝わってくる。被害者は警察、法廷、大学やコミュニティにとあらゆる場でPTSDにも悩まされながら、厳しい戦いを強いられる状況になるのだ。

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旭川市でいったん止まった条例制定の動きと市民運動

週刊金曜日』2022年10月28日(1398号)特集「統一教会だけじゃない!part2:「家族」に介入する自民党宗教右派」内掲載記事 (編集部の許可を得て転載)

 

2020年頃から「家庭教育支援条例」制定に向けた動きが活発化した北海道旭川市では、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を中心に、日本会議モラロジー自民党が連携してきた。統一教会が注目される中で制定の動きはいったん止まったが、そこには危機感を抱いて活動を続ける市民らの力もあった。

 

条例制定を目指して2020年8月23日に設立されたのが「旭川家庭教育を支援する会」だ。設立直前に、地元の有力な経営者であり、日本会議支部「上川協議会」の会長や旭川モラロジー事務所の代表世話人も務める落合博志氏と、統一教会旭川家庭教会総務部長の万代英樹氏の二人が市議会の各会派を回って会の設立準備をしていると趣旨説明をしたという。

「家庭連合」の名刺で

 8月7日に訪問を受けた能登谷繁旭川市議(共産党)によれば、万代氏が「支援する会」の名刺を出したため「普段はお仕事とか何されているんですか?」と聞くと、「家庭連合」の名刺をおもむろに出してきたという。「いやあ、(共産党の)私にこれ出すのかよと思いました」と能登谷市議は苦笑いする。

 野村パターソン和孝市議(立憲民主党)は、21年9月の市議補選で初当選した後に万代氏が連絡をしてきて、面会したという。帰り際に仕事を聞くと、やはり家庭連合の名刺を渡された。統一教会関係者がかなり表立って動いていたことがわかる。

「支援する会」の会長には自民党の東国幹北海道議(のち衆議院議員)が就任し、幹部には道議や市議らが加わった。副会長には落合氏が就き、中心的な役割を果たした。事務局長は菅原範明市議だが、事務局次長の万代氏が運営の実質の中心だったと思われる。また、同会幹事長を勤めた自民党の蝦名信幸市議は息子の蛯名安信市議とともに統一教会の元会員ということを『北海道新聞』のアンケートで認めたと今年9月3日付で報じられた。

利用された「いじめ問題」

 一方、能登谷議員から「支援する会」の立ち上げを聞いた旭川市民の由井久志氏らは違和感を持ち、まずは勉強会を開くことにした。そして「旭川家庭教育支援のあり方を考える会」を20年10月に設立し、講演会や学習会などを積み重ねてきた。旭川市議会は与野党が拮抗しているため、ちょっとしたことで力関係もひっくり返り、条例案が出されたら通されてしまうかもしれないという危機感が常にあったと由井氏は語る。

 

ただ、「支援する会」は「考える会」を上回るスピードで講演会を開催していた。特に「支援する会」は、21年に旭川で起き、全国的な注目を浴びている女子中学生のいじめ凍死事件を取り上げ、どういった内容の条例を作ろうとしているかなどの詳しい内容には踏み込まずに、いじめ問題を解決するためにも「家庭教育支援」が必要だと強調。裾野を広げ入会者を募っていった。

能登谷市議は「家庭、教育、支援と悪い言葉はひとつも入っていないので、単純に良いことだと思ってしまう人もいるが、行政が家庭や教育のあり方を指図すべきではない。家庭版の憲法改正運動のひとつだ」と話す。由井氏は「家庭が本当に必要とする支援を届けなければいけない」とした。

21年9月の旭川市長選挙で、条例制定を公約に掲げる今津寛介氏(自民党)が当選すると、いつ議会に条例案が出されてもおかしくない状況になった。翌月10月の衆議院北海道6区は「支援する会」会長の東氏が当選。今年1月には「支援する会」が意見交換会を開き、教育関係者や旭川市の職員や市議に「支援する会」の条例案を提示した。

危機は終わっていない

だが、今年7月の安倍晋三氏銃撃事件で統一教会が注目を集めると、雲行きが一気に変わった。野村市議や由井氏らは各々に問題を積極的に発信。8月には「支援する会」と統一教会の関係をTBS「報道特集」が扱い、さらに地元での影響力がある『北海道新聞』も報道したため、批判が強まっていった。また、東議員や今津市長、蛯名市議と統一教会との接点も発覚した。

 そして9月14日、突然「支援する会」は解散した。「少し時間的猶予をもらった」と由井氏は言う。圧倒的に自民が強い議会ではないので、簡単に条例案を出せなくなったことは確かだ。だが条例制定の動きが終わったとも考えられないという。統一教会の役割は大きく、今まで条例が制定された自治体に比べ、旭川では関わりが顕著だった。同時に、条例をめぐってはさまざまな勢力が連携して動いており、統一教会だけ切り離しても他は安泰で、条例を推進できてしまうからだ。

 また、メディアで報道されるようになっても、市民に「家庭教育」をめぐる問題について知られているとは言いがたい状況があると、由井氏、能登谷市議、野村市議は口々に語った。問題のわかりづらさを考えると、SNSでの発信やメディア報道だけでは限界がある。能登谷市議や由井氏は、今だからこそさらに地道に勉強会などを積み重ねていきたい、という。野村市議は、今後はチラシなどの紙媒体も活用し、市民に草の根的に問題を訴えていくつもりだと語った。

 条例ができてしまった自治体では、条例撤廃を望む声も上がりつつある。家庭教育をめぐるせめぎあいに、より注目する必要がある。

「家庭教育」めぐる連携の動き、 何が問題か

週刊金曜日』2022年10月28日(1398号)特集「統一教会だけじゃない!part2:「家族」に介入する自民党宗教右派」内掲載記事 (編集部の許可を得て転載)

報道や国会などで連日、統一教会が槍玉にあげられ、政界での唯一の暗躍者かのような印象を世間に与えている。思い返せば、6年ほど前のいわゆる「日本会議ブーム」のときも、保守団体「日本会議」のみが焦点化された。問題は、統一教会だけでも、日本会議だけでもない。

「家庭教育」をめぐる動きも同様で、統一教会が突如始めたものではない。本格化したのは2006年12月、第一次安倍晋三政権のもとで教育基本法が全面的に「改正」されて以降だ。

「改正」は、「愛国心」が新たに加わるなどで大きな批判を浴びたが、家庭教育に関する第10条も新設された。保護者が子どもの教育の第一義的責任を持つとし、国や地方公共団体自治体)は家庭教育を支援するために必要な施策を講ずる努力義務を負うことが定められたのだ。第13条も新設され、学校、家庭、地域住民などが相互に連携協力することも努力義務とされた。

現場で見えた「親学」批判の難しさ

 この前段として、「改正」を見据えて民間で着々と準備されたのが「親学(おやがく)」だった。「親学」は、教育の第一義的責任は家庭にあり、親にあると説いており、「改正教育基本法」とリンクする。親や家庭、地域の教育力が近年不足しているという前提に立ち、「親としての学び」「親になるための学び」を2本の柱とする。親が変わり成長すれば子どもの心も育つという「主体変容」や、「母性」と「父性」の役割を明確にすること、子どもの発達段階に応じて「家庭教育」で配慮することなどを基本的な考え方とし、「伝統的子育て」を「脳科学」を用いて推奨している。

 私も14年と15年、当時東京・水道橋にあった倫理研究所(16年に紀尾井町に移転)で「親学推進協会」主催の講座を受講してみた。丸一日の「親学基礎講座」(受講費1万円)と、丸二日かけた「親学アドバイザー認定講座」(同2万5000円)だ。特に保守的な考えの人たちだけではなく、幼稚園や保育園、小学校などで働いていてこの資格が役立つと思った人や、カウンセリング系の仕事をしている人、就職に役立つと思った学生、単に興味を持ったという人などさまざまな人が参加していた。

 講座では、「親学」の中心的な存在であり、「日本会議」の役員を務めた高橋史朗麗澤大学特別教授も熱心に講義していた。休憩時間は受講者からの質問に丁寧に答えたり、会話をしたりと、真面目な活動ぶりが見えた。

 講座の内容も右派色が前面に出ているわけではない。たとえば、考えを一方的に押し付けるのではなくまず子どものいうことをよく傾聴しようというメッセージなど同意できるものもあったし、「父親の子育て参加」を呼びかけてもいた。

「伝統的子育て」の「伝統」が具体的に何かがわからないことや、「母性・父性」を強調するなどフェミニストとして疑問を持つところももちろんあったが、「母親=母性」というわけではなく誰でも母性、父性的な関わりをもつのが重要などとの説明も一応あった。親学=トンデモというイメージが左派系の人たちの間で流布されているが、実際の講座や実践の場で行なわれていることは全面的に問題だとは言いきれず、批判はそう簡単なことではないと感じた。講座終了後にレポートを出して合格すると、アドバイザーの資格が取れ、私も資格を取得した。

「親学」と政治との深いつながり

「親学」の研究や普及が本格的に始まったのは教育基本法「改正」の前年05年からだが、そもそものルーツを辿ると、政治との関係の深さが見えてくる。

 遡ること40年以上、1980年に大平正芳政権下で「家庭基盤充実のための提言」がまとめられた。「家庭」は社会の最も大切な基礎集団で、「日本型福祉社会」と「家庭基盤充実」政策が今日的課題であるとするもので、大平首相を本部長に「家庭基盤充実対策本部」設置も盛り込まれた。だが同年に大平首相が急死し、対策本部設置は実現しなかった。前出の高橋氏によると、2012年に結成された「家庭教育支援議員連盟(親学推進議員連盟)」は、「家庭教育支援法」を作ってこの対策本部を再現しようとしていた。*1

 高橋氏自身は、中曽根康弘政権下で1984年に設置された「臨時教育審議会」の委員を務めた人物でもある。その臨教審の87年の最終答申では、「家庭の教育力の回復」「親となるための学習」など「親学」がキーワードとしている言葉がすでに使われている。臨教審にいた高橋氏が場所を変え、今度は「親学」の場でこの時の理念を実現しようとしたとも言えるだろう。

 高橋氏は2005年には、PHP研究所とともに「PHP親学研究会」を発足。「改正教育基本法を具体的に推進するため」だった。*2翌06年に「親学推進協会」(09年に一般社団法人化)が発足し、教育基本法が「改正」された。当時の安倍首相自身は「美しい国」というスローガンのもとに「愛国心」や「伝統的な家族」の押し付けを進めており、「家庭教育」をめぐって価値観が共鳴する政治家や団体、企業、個人が連携していく構図は、この後も続いていく。

 協会設立にあたっては、日本会議の構成団体でもある「倫理研究所」と、政治との関係が密接な「日本財団」からの援助が大きかった。*3倫理研究所や「モラロジー道徳研究財団」などの倫理修養系の日本会議系保守団体と親学の関係は深い。

日本青年会議所(日本JC)」が果たした役割も大きい。17年度に「今日からやれる『親道』プログラム」を事業として実施するなどして、「親学」の拡散に貢献。さらに「親学」に関心をもってもらうための取り組みとして、高橋氏が考案した子が親への感謝を表現する「親守詩(おやもりうた)」も地方の青年会議所が広げた。その後、日本最大規模の教師の団体「TOSS」も親子合作の「親守詩」を提唱したので、学校現場などにも拡散していった。学校現場で言えば、「親学」の講演会を多数開いてきたPTAの存在も大きい。

12年からは親守詩の地方大会が始まり、13年からは全国大会が開催。毎日新聞社が共催し、内閣府文部科学省総務省などをはじめ、PTAなどさまざまな団体や企業が後援・協力した。20年に親守詩普及委員会が解散し全国大会は行なわれなくなったが、地方大会は現在も続いている。一方で、統一教会の問題が浮上して以降は、統一教会との関連が否定できない団体が協賛に入っているとして、後援を取り消す自治体も出ている。

 

発達障害」予防で火がついた批判の波

 「親学」はさまざまな批判の目にもさらされるようになる。

 安倍政権下の07年4月には、安倍首相直属の「教育再生会議」が、親に向けた子育て指針として「『親学』に関する緊急提言」の概要をまとめた。「子守唄を聞かせ、母乳で育児」「授乳中はテレビをつけない」などの項目が含まれたもので、批判を浴び、見送りとなった。だが、その後も「親の学び」「親育ち」などと時に名前を変えながら「親学」は「教育再生会議」やその後継組織の「教育再生懇談会」の報告書などで言及され続けた。

 民主党政権時代の12年4月には、「親学推進議連」が発足し。「家庭教育支援法」を年内に制定しようとする動きが本格化した。会長を安倍晋三氏、幹事長を鈴木寛氏、事務局長を下村博文氏の各議員が務め、社民、共産を除く超党派の議員が加盟した。

 だがその矢先の同年5月、「大阪維新の会大阪市議団作成の「家庭教育支援条例案」の中に、発達障害は「乳幼児期の愛着形成の不足」が要因で「伝統的子育てによって」「予防、防止できる」などの記述があったことから批判が殺到し、素案が白紙撤回された。この影響は大きく、高橋氏が反論声明を出すなどしたが批判は収まらず、結果、同議連は年内の「家庭教育支援法」の制定を諦め、1年足らずで解散に追い込まれた。*4

 その煽りは「親学推進協会」にもやってきて、13年5月、東京にあった本部は富山市の学校法人浦山学園・富山情報ビジネス専門学校に移転した。理事長だった高橋氏は会長となり、実質の運営は協会の評議員であった同学校理事長の浦山哲郎氏のもと、富山の事務局が担った。それまでの事業も続けつつ、13年から協会は全国の専門学校や短大で「親学」を導入の動きを本格化させるとともに、各地で「家庭教育支援条例」や法の制定に向けた動きを支援していった。

 だが、親学講座の出席人数の確保などには相当苦労していたと思われ、東京での親学関係講座はキャンセルされることも多くなっていた。その後、協会事務局は19年に東京に再び移転したが、経営難を理由として今年解散した。

 

自治体で広がる「家庭教育支援条例」

 12年は、大阪維新の会条例案や「親学推進議連」が失敗した年でもあったが、全国初となる「家庭教育支援条例」が熊本県で制定された年でもある。

 条例制定の中心となったのは、自民党の溝口幸治県議だ。溝口県議は11年に「熊本県親学推進議員連盟」を発足させ、高橋氏を招き講演会を開催するなどしながら条例作りに取り組んだ。

 条例は以下の文言から始まる。

 

家庭は、教育の原点であり、全ての教育の出発点である。(中略)しかしながら、少子化核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、社会が変化している中、過保護、過干渉、放任など、家庭の教育力の低下が指摘されている。また、育児の不安や児童虐待などが問題となるとともに、いじめや子どもたちの自尊心の低さが課題となっている。

 

「改正教育基本法」と同じく家庭は教育の原点だとしている。「家庭の教育力の低下」(本当に起きたのかの検証はなされていない)を挙げて虐待やいじめなどの問題とつなげられている。この前提の下で条例は各家庭が家庭教育に対する責任を自覚し、役割を認識するよう呼びかけ、県や保護者、学校等、地域、事業者などの役割を定めている。そして「親としての学びを支援する学習機会の提供」と「親になるための学びの推進」が中心的な位置付けとなっており、「親学」の主張と重なっている。

 家庭教育支援条例は、今年(2022年)9月時点で10県6市で制定されている。家庭教育「支援」ではなく、群馬県岡山県では「応援」というなど多少の名称の違いのほか、「祖父母の役割」が条例で規定(岐阜県群馬県茨城県福井県)、幼少・幼児期教育に力を入れる(茨城県福井県岡山県)、インターネットやゲームのトレーディングカードなどの利用についての取り決めを行なう(志木市)などの多少の違いはある。だが、どれも内容は熊本とほぼ同じだ。このほか、話題になった「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」も家庭での保護者の責務が定められ、家庭教育との関連が強い。

 県の条例はすべて自民党議員の提案によるもので、市は4市が市長提案、2市が自民党議員提案だ。議員提案の場合、若手や中堅の議員が中心になり条例づくりが行なわれることが多く、「親学推進協会」の講座に出席したり、親学アドバイザーの資格を取得した議員もいる。

 民主系・無所属系会派が反対に回った岡山県をはじめ、社民党系や無所属議員が反対した事例も一部あるが、反対に回るのは共産党だけの自治体が大部分だった。そのため、実際私が聞き取りを行なった県や市では、条例制定に反対する数少ない議員が反対討論の中で、市側や提案した自民党議員らからの回答を議会で引き出すことで、なんとか条例制定後の施策に影響を与えようとするなどの抵抗が行なわれてきた。

 条例に基づく施策が啓発事業中心になりがちという問題もある。たとえば、「親としての学び」のプログラム開発、啓発イベントや講座の開催などだ。私の取材に対し、自治体の担当者らは口々に、啓発講座などを開いても本当に支援が必要な人にはなかなか届かないというジレンマを吐露した。厳しい状況の人たちは啓発講座には出ないという声や、温泉街で住み込みで夜遅くまで働くシングルマザーが多い土地で「早寝早起き朝ごはん」啓発をしても現実の市民が抱える問題からずれているという声もあった。

 それでも「家庭教育支援」という言葉はよいもののように聞こえてしまうことから、市民の間で問題についての関心が高まることは稀だ。自民党が圧倒的に強い議会構成になっている自治体が多いこともあり、条例は、大阪市岡山県などの例外はあっても、大きな反対運動が起こることもなく制定されてきた。

 

 

「家庭」にこだわる統一教会が各地で運動

 統一教会の動きが目立ちはじめるのは、16年ごろからだ。「世界平和統一家庭連合」という現在の名称からわかるように、統一教会にとって「家庭」は最も重要なものと位置付けられており、「平和大使協議会」や「世界平和女性連合」などの関連団体も「家庭」の価値を打ち出し活動を行なっている。統一教会や関連団体にとって「家庭教育支援」のための法律や条例制定は非常に重要な政策課題であり、その実現のために運動を展開しているのだ。それと同時に、教会や関連団体は性的な「純潔」を守ることを求める「純潔教育」にも強いこだわりを持ち、「青少年健全育成」も提唱してきた。

 14年秋から、自民党の「青少年健全育成推進調査会」(中曽根弘文会長)に設置されたプロジェクトチームが検討を始めたのが、まさに「青少年健全育成基本法案」と「家庭教育支援法案」のセットであったが、統一教会の動きが目立ち始めることになる背景として理解できる。

 そして自民党は16年10月に「家庭教育支援法案(素案)」を公表した。国や自治体に「家庭教育」を支援する施策を策定・実施する責務を課すとともに、学校、保育所や地域住民にそうした施策に協力するよう努めるべきとする内容で、熊本など自治体の条例とほぼ同じだ。家族を「社会の基礎的な集団」と位置づけた上で、「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるように」と家庭教育の理念を規定しており、個人でなく家族を基礎的な単位とするという自民党憲法改正草案24条との呼応も明白だった。17年2月の修正案ではこの理念が削除されたが、国がすべての家庭や私的領域に介入することを可能にする法案だという根本は変わっていない。

 17年10月の衆院選自民党の選挙公約には「家庭教育支援法」の制定が盛り込まれ、「親学推進協会」もこの年のメールマガジンで翌年に同法が制定予定だと明記していた。

 16年11月18日には統一教会系新聞『世界日報』が「『家庭教育支援法』は必要だ」と題する社説を出し、それ以降同紙の「家庭教育支援」に関する記事数が飛躍的に増加していった。17年2月18日には、「家庭基盤充実」を活動テーマとして掲げる統一教会系「平和大使協議会」の「ファミリー・プロミス」メールマガジンでも同法の成立に向けて世論を喚起する必要があると呼びかけられた。このため各地で、統一教会は同法制定に向けた運動を展開していく。

 18年頃には、各地で「家庭教育支援法」制定を求める請願が出され、意見書可決の動きが相次ぐようになった。たとえば神奈川県や熊本県の複数の自治体で意見書を求める陳情が出されたが、提出者は統一教会系「国際勝共連合」関係者らであることがわかっている。同様の陳情は全国各地の市町村で出されており、『朝日新聞』10月10日付記事によれば、滋賀、石川、香川、長崎の4県と、川崎市など30市町村で意見書が可決し、国会に提出された。

 また、「全国地方議員研修会」という全国から地方議員を集めた研修会も15年の第1回から今年まで6回開かれている。特に18年の第3回からは「家庭教育支援条例」や「家庭教育支援法」の制定が中心テーマとなった。国会議員の義家弘介氏、北村経夫氏らの他、条例が制定された熊本、茨城、岡山県県議会議員や、高橋氏や松居和氏などの「親学推進協会」関係者、前出の教師の団体「TOSS」関係者などが登壇し、21年の研修会では「家庭教育支援法の早期制定を求める決議文」が採択されている。そして、この研修会の参加費の振込先が「平和大使協議会」で、富山市議らが研修会にオンライン参加をした際、統一教会の施設を使っていたことも指摘されており、研修会は統一教会や関連団体が関与して開催されてきた可能性が高い。

 加えて、富山市小田原市などの各地で「国際勝共連合」の幹部である青津和代氏を招き、自民党議員を対象とした「家庭教育支援」についての勉強会も開催されてきた。

また、『朝日新聞』10月20日付記事によれば、「平和大使協議会」などの統一教会の関連団体が、国政選挙の際に自民党の国会議員に対して、「家庭教育支援法」や「青少年健全育成法」の制定などの政策に賛同するよう明記した「推薦確認書」に署名を求めていた。

 自民党や右派勢力による「家庭教育支援法」制定への動きが本格化したことに危機感を持ち、18年2月には市民団体「24条変えさせないキャンペーン」、5月には日本弁護士連合会が同法案を批判する集会を開催し、本誌を含め同法案批判の記事なども出版された。だが、同法案への注意喚起が広がりを欠いたことは否めない。結局、国会には現在まで「家庭教育支援法案」は提出されていないが、「家庭教育支援条例」制定の動きは続いている。さまざまな勢力が連携してきた動きのため、統一教会を叩けば同法案や条例を潰せるわけではない。同法や条例成立に向けた連携の動きを注視し、対抗策を練っていく必要がある。

 

 

 

*1:親学推進協会メールマガジン2020年4月13日発行。

*2:『「親学」学習ワークブック』はじめに(富山「親学」推進委員会委員長・浦山哲郎)

*3:親学推進協会メールマガジン2020年4月13日発行。

*4:モラロジー道徳教育財団「髙橋史朗85―親と教師が日本を変える」。https://www.moralogy.jp/salon220927-01/

「行動する女たちの会」関連書籍を紹介

エトセトラ VOL.4に、石川優実さんによる元「行動する女たちの会」の山田満枝さんと髙木澄子さんのインタビューが掲載されており、それが「フェミやろ」のイベントの際にも何度か話題にのぼっていました。「行動する女たちの会」の人たちのお話をぜひ!と勧めた張本人である私が思った以上の注目ぶりでびっくりすると同時に、嬉しく思っています。 

エトセトラ VOL.4

 

そんなこともあり、せっかくの機会なので、「行動する女たちの会」(1885年までは「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会」)によるものや、関連団体、さらに元会員による出版など、「行動する会」に関連して出版されている書籍をここでまとめて紹介しておきます。(ほとんど絶版というのが問題ですが、古本で手に入るものもあるかと思い。)

 

国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会・離婚調停分科会 俵萠子編 『離婚は怖くない』読売新聞社1977年

 

 

私たちの雇用平等法をつくる会 中島通子編

「私たちの男女雇用平等法 働く女が未来を拓く』亜紀書房 1984

 

 

三井マリ子・坂本ななえ・中嶋里美『女たちは地球人ー叛乱のすすめ18章』学陽書房 1986年

  • 教育分科会の活動について書かれている、メンバーによる書籍 

 

行動する女たちの会・教育分科会 魔女っ子くらぶ

がんばれ女の子シリーズ

I 『”女だから”のふしぎ』魔女っ子くらぶ 星雲社発売 遙書房発行 1991年

II 「わたしらしく、愛と性』星雲社発売 遙書房発行 1991年 

III 「思いっきり、マイウェイ』星雲社発売 遙書房発行 1993年 

 

“女だから”のふしぎ (がんばれ女の子シリーズ)
 

 

 

わたしらしく、愛と性 (がんばれ女の子シリーズ)
 

 

 

 

 行動する女たちの会・メディアグループ

『ポルノウォッチングーメディアの中の女の性』学陽書房 1990年

 

 

 中島通子『「女が働くこと」をもういちど考える』労働教育センター 1993年

  • 元会員だった中島通子さんによる書籍。「私作る人・僕食べる人」CM抗議や、均等法の制定をめぐっての運動についての言及があります。

 

行動する会記録集編集委員会『行動する女たちが拓いた道ーメキシコからニューヨークへ』未来社 1999年

  •  「行動する会」の歴史について元会員たちが振り返って書いた記録集。膨大な活動を記した年表付き。

 

 長谷川美子「たかが名簿、されど名簿 : 学校現場から男女平等を考える」双風舎編集部編『バックラッシュ!』2006年

バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?
 

 

 吉武輝子『おんなたちの運動史ーわたくしの生きた戦後』ミネルヴァ書房 2006年

  • 元会員でもあった吉武輝子さんが書かれた自伝でもある女性運動史。第8章、第9章でとくに「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会」について書かれています。

 

『行動する女たちの会資料集成』全8巻 六花出版 

  • 会のニュースレターやチラシ、パンフレットなどの復刻版資料集です。
  • 井上輝子さんと山口智美による解説も収録

 

会員による書籍は他にも多数あり、のちに追加するかもしれませんが、とりあえず。

他に会が出したパンフも多数ありますが、そちらは『行動する女たちの会資料集成』に収録されているほか、NWEC東京ウィメンズプラザなどで閲覧できるものもあると思います。

 

 

 

 

北米の「慰安婦」関連の像や碑(2020年9月現在)

2018年にこのブログに一度リストを載せましたが、その後新たにできたものもあるので、最新版を掲載しておきます。

 

  1. 2010年10月 ニュージャージー州バーゲン郡 パリセイズ・パーク 碑
  2. 2012年6月 ニューヨーク州 ナッソー郡 碑
  3. 2012年12月 カリフォルニア州オレンジ郡 ガーデングローブ 碑 
  4. 2013年3月 ニュージャージー州バーゲン郡 ハッケンサック 碑
  5. 2013年7月 カリフォルニア州ロサンゼルス郡 グレンデール 少女像
  6. 2014年5月 ヴァージニア フェアファックス郡 碑
  7. 2014年8月 ニュージャージー州ハドソン郡 ユニオンシティ 碑
  8. 2014年8月 ミシガン州オークランド郡 サウスフィールド 少女像 民有地
  9. 2015年11月 カナダ オンタリオ州 トロント 少女像 民有地
  10. 2017年6月 ジョージア州ディカーブ郡 ブルックヘイヴン 少女像
  11. 2017年7月 ニュージャージー州バーゲン郡 クリフサイドパーク 碑 民有地
  12. 2017年9月 カリフォルニア州 サンフランシスコ 像
  13. 2017年10月 ニューヨーク州 ニューヨーク(マンハッタン地区)少女像 民有地
  14. 2018年5月 ニュージャージー州 バーゲン郡フォート・リー 碑
  15. 2019年10月 ヴァージニア州アナンデール 少女像 民有地
  16. 2020年3月 コネチカット州ハムデン 少女像 民有地

 

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カリフォルニア州のガーデングローブにある碑

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ヴァージニア州アナンデールの「平和の少女像」