橋本ヒロ子氏基本法インタビューにみる、男女共同参画の骨抜き状態


東京新聞のサイトに、「女性の登用進んだが… 男女共同参画社会基本法10年 橋本ヒロ子さんに聞く」というインタビュー記事が掲載された。男女共同参画社会基本法施行から10年たって、この間の歩みや課題などを橋本さんに聞くという内容だ。

しかしこの内容、なんだかなと思うところがちらほらあった。インタビュー記事ということで、実際のインタビューがまずかったのか、それとも記事にまとめる段階でおかしくなったのかはわからないが、気になったところをいくつか。

現状は男女共同参画社会になっているか。
 理念に反する状態は多い。男性は長時間労働が減らない。女性は同様の激しい働き方か、低賃金パート。父親が家事、育児をする時間がなく(グラフ)、母親に任せっきりにしてきたことが、虐待や子どもの非行につながっている面は大きいと思う。自殺者の年間三万人超は続き、DVで「命の危険を感じた」女性が13%を超えた。エイズウイルスなど性感染症増加、デートDV被害増などは深刻です。

「父親が家事、育児をする時間がなく(グラフ)、母親に任せっきりにしてきたことが、虐待や子どもの非行につながっている面は大きいと思う」というのは、あるべき家庭の姿=父母がそろっている、というのを前提にしているかのようで、どうかと思う。これでは母親しかいない家庭や、親がいないケースでは、虐待や子どもの非行が起きる、という誤解を招きかねない。もちろん、ヘテロ中心主義的な「家庭」の考え方ともいえるけれど。
DVで「命の危険を感じた」女性が13%を超えたとか、デートDV被害増などは深刻だというのには同意するが、これって必ずしも実際にDVやデートDVがふえているのか、あるいは被害を公にしやすくなったために、数字が増えたのか、これだけではわからない。

 −女性の社会進出が、非婚や少子化の問題を呼ぶと言われることもあるが。
 まったく違います。女性が結婚を嫌がるのは子育てや家事、介護の全責任を負う状態がまだまだ続いており、女性にだけ負担を強いていると感じているから。男性も女性も、仕事も家庭も協力して楽しめるのであれば、女性は進んで結婚するし、子どもを産むはず。男女共同参画社会はシングルを増やす社会では決してなく、みな家族を持って柔軟に生きようという社会。安心して休めるなら産みたい女性は多い。非正規職員だと安心して産むこともできない。

これはつっこみどころ満載といえばいいのか、うーん。「仕事も家庭も協力して楽しめるのであれば、女性は進んで結婚するし、子どもを産むはず」って何だこれー。シングルであること=仕事も家庭も協力して楽しめない、産むこともできない、可哀想な状態、って感じでもあるなあ。「女性=本来(ヘテロの)結婚したくて、子どもも産みたい人たち」と決めつけるのはやめてほしいよなあ。
こういう発言がでてしまうっていうのが、「男女共同参画」というものについて「一般受け」を狙うあまり、どんどん骨抜きのわけわからない状況に自らしてしまっている、どんづまり状態をよーく表しているように思う。

 −私たちにできることは。
 差別や不平等を特に意識していなくとも、家庭や職場で何か不安を感じていませんか。「食べさせてやってる」「子育ては母親の責任」と言われても言い返せない、正規職員になれなくても「仕方ない」と思っていませんか。「女だから」我慢したりすることがあっていいのだろうかと一度考えてほしい。
 女の子に生まれても男の子に生まれても多くの可能性の中で豊かな人生が送れるように、男だからこう生きなきゃ、女だから…ではないと思う。来年度中に施策方針を決める国の第三次行動計画が策定され、意見募集もされるので、一人一人が関心を持って意見を出していくのも大切です。

「私たちにできること」が、自らの意識について考え直し、国の行動計画に対して意見を出すことだけってのは、あまりに悲し過ぎる。