キャンパス・ミスコン事業を行う企業担当者へのインタビュー

一橋大学でのミスコンに関するトラブルが話題になっているようです。
「一橋大の大学祭ミスコンでトラブル 性同一性障害の男子の参加拒否」
Togetter ミスコン男の娘出場騒動で一橋大学学園祭委員に対し公開質問状提出 まとめ

このニュースに関して、Twitterで小宮友根(@froots)さんが以下のツイートをしていらっしゃいました。

そこで思い出したので、昨年のこの時期ICUのミスコン問題が起きていた頃に、ミスコン関連企業の方に電話インタビューを行った内容をまとめたものを掲載します。今回の一橋のミスコンに関連する企業とは別の企業になりますが、同じ業界ということで、現在の多くのキャンパス・ミスコン開催の背後にいる企業側の視点の一例としては参考になるかもしれません。

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2011年7月5日朝10時頃。A社本社あてに、前日に続いて電話。前日は担当者不在といわれ、かけなおすというやりとりがあったが、この日も同じ男性がでた。
ミスキャンパスコンテストのご担当者の方に話しがききたいとまた言ったところ、今日も朝から出ているのでいつ帰ってくるかわからないと。何を聞きたいのかわからないが、「私の知識」で対応できる範囲のことならする、とこの男性にいわれた。

私が現在、A社本社近所に滞在中なので、広報資料などいただけて、その際にお話伺えるならすぐ対応できるのでお願いできないかと聞いてみたところ、電話でなら対応するという。今でもいいんですか?と聞いたらいいというので、急遽電話取材モードに。

フェミニズム系の研究者で、ミスコンの歴史や現状について調査している。今現在大学におけるミスコンが注目を集め、議論もよんでいるようなので、その現状や歴史などについて知りたいという旨のことをいうと、その程度なら対応できるとこの男性。この方はA社の「代表」だということだった。(いったい「外にでている担当者」は実在するのかどうか、この時点で興味がわいた。)

ミスキャンパスコンテストはA社が主催しているのではなく、大学の学生たちが行い、A社はそれを取材するという立場である。なので主催という観点からは話できない。学生たちが候補者を選び実行するものであり、実務的にサイトをつくるなどの手助けはする、そういう立場。去年は19大学にて行われた。その取材をするのがA社という位置付けである。

「ミスキャンパス」は登録商標で、代表者個人の名前で登録している。商標として登録したのは、「ミスキャンパス」という名称が風俗系のタイトルやらビラなどで使われるのを防ぐため。風俗系で使われるとイメージが損なわれるから、商標登録してそれを防いだ。
「ミスターキャンパス」については商標化していないが、これは風俗において使われる可能性が低いと思うからだ。

「ミスキャンパス」が大学におけるかわいこちゃんコンテストではいけないので、我々はたとえば今年は、アジアの友好親善の一翼を担う親善大使としての活動などの可能性も模索している。エコ活動ももうひとつの社会貢献の可能性。意義ある活動をしてほしい、おしつけがましいかもしれないが、友好親善活動的なものにつながればと考えている。

学生のやりたいという思いがあり、そこに企業としては事業として成り立つかどうかという視点も必要になる。賛同した大学には主体性をもって運営していただいている。

イベントで選ばれた人たちについては、ウェブや雑誌に掲載したり、テレビ番組化などをしたりする。ほかの企業からイベントの協賛もつのり、ビジネス上の展開をしている。A社の役割は情報として提供すること。コンテストのビジネス性はどうかを考えざるを得ない面はある。

立命館あたりは着物を着せたりしているようだが、と聞いてみたら、多くの大学はウェディングドレスを着せたりしている。ほかの企業の一部協賛をとったりすることでこれは成り立つし、学生たちが地元の着物関連の企業などのスポンサーをつのったり、先輩のつてをたどって探したりなどの活動をしている。ウェディングドレスはメーカーが広告の場として提供している。

ミスキャンパスコンテストはA社としては「コンテンツのひとつ」として考えている。はじまりは2006年から。アクセス数は始めたときからあまりかわっていないが、「キャンパスナビ」の中では人気コンテンツ。

ミスターキャンパスはやっている大学自体も少ないし、ビジネスとして広告スポンサーもつけづらく、事業性が乏しい。なのでA社はとくにかかわっていない。

たとえばトランスジェンダー性同一性障害のひとがミスキャンパスに出たらどうなのか、ときいてみたら、性同一性障害の方が出た場合、あくまでも大学生主体のコンテストで、イベント運営しているのも学生なので、事業としてそれがまずいということはいわない。あくまでもうちの立場は情報として提供するということ。しかしながら、コンテストのビジネス性はどうかという点は、たとえばコンテスト出場者全員が性同一性障害の方々というようになった際、考えざるを得ない面もある。(しかしA社の人の話を聞く限り、「ミスキャンパス」には「女性」および「最大限譲歩して」性同一性障害の女性はなれるが、コンテスト全体の出場者からしたらマイノリティである必要があるっぽい。そしてそれ以外は念頭にはないという印象をもった。要するにICUでのミスキャンパスにもしA社が絡むとしたら、やはり基本的には「女性」しか対象とならないだろう、ということだ。)

国際基督教大学が今年から「ミスキャンパス」をはじめるという話をきいたがどうなのか、という質問に対して、「それは知らなかった」という答え。(直接の担当者ならわかるのか否かは謎)。商標登録しているのに、ほかの大学で「ミスキャンパス」を行ってもいいと考えているのかと聞くと、ミスキャンパスというのは一般呼称でもあるので、A社がこだわるのはビジネスとして、とくに風俗系ビジネスで使用されるときだ。ネガティブイメージができるから、とのこと。たとえば東大でミスキャンパスコンテストがあり、それを商標違反だとこだわってもおかしいし、する気はない。ICUの件は知らなかったというのは2度ほど言っていた。

ミスキャンパスコンテストへの抗議は聞いたことがない。そもそもそういう土壌がある大学ではミスキャンパスは行われていない。大学が公式に認めた、公式行事としてやっているケースが多い。そうなると抗議は発生しづらい。

関西においてミスキャンパスが最近いくつかの大学で開催されるようになった背景について。最初は関西学院同志社で始まった。関西の大学には東京への対抗心が強く、東大や慶応などの有名校でミスキャンパスが行われ、脚光をあびている。そんな中で、有志の人たちがやりたいとなった。東京に負けたくないという思いが強いのだろう。
その後立命館と関大でも始まった。立命館でキャンパス外で行われたのは、最初だし公式行事としての認定が得られていないという状況がある。実績がないと公式行事として認められないという状況があるようだ。
京都大学については、行うような土壌がない。左翼の思想が強い大学であり、反発が強かったようだ。
立命も左翼系じゃないですか」と私がきいたら、以前はそうだったろうが、今は同志社立命が並んでいるみたいな個人的印象もあり、左翼的な思想はかなり薄まったはず。大学側のマーケティング努力もあるのだろう。(明らかに左翼思想が苦手な雰囲気が電話からかもし出されていた。)
反発の土壌という面ではICUもそうじゃないですか?ときいたら「ああキリスト教だからそうかもしれないですねえ」とのお答え。ICUジェンダー研究系背景についてはご存知ない様子。

有志がやったという点では、同志社立命も同じようなケース。このあたりの学生たちには、ミスキャンパスがジェンダー問題であるという意識がない。もりあがりのイベントのひとつとして考えており、注目あびやすいから開催する。実際あびているケースが多い。アナウンサーの登竜門的に使われているのは都内有名大学などの一部の大学だけで、ほとんどの大学ではそういう状況ではない。アナウンサーというのは志望動機のひとつではあるだろうが、もうひとつ質がいい目立ちたがりやみたいな側面がある。そして目的意識をもつタイプもいる。アナウンサーもあるが、就職難の状況の中で、CAなど人気職業へのステップとして考えている人も多い。ほかには学生時代の思い出として出るタイプもいる。
実行委員会にはいる学生たちの就職には影響しない。学生を採用する企業として、こういうイベント企画は評価がまちまちだろう。だが、注目をあびやすく、集客力があるイベントとしてやりがいを感じているようだ。
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最後にこの代表の方のメアドを伺うついでに、代表のお仕事をいつからやっているのか聞いたが、今年から始めたのでまだ数ヶ月との答え。
しかし代表自ら2日連続で電話に出ていること、「担当者」がいつも「外出中」のようであることなどから、このオフィスには果たして本当に彼の部下はいるのだろうか、とはちょっと思った。

ちなみに、この会社は昨年私が日本に滞在していたときの滞在先から徒歩10分もかからないところだったので、散歩がてらにどんな会社なのかなーと見にいってみたら、あのエリアの中でも目立って古い住居用マンションの一室だった。大手町にもオフィスがあるようなので、もしかしたらそちらは立派なのかもしれないが、このオフィスはオシャレな若者相手のネット系商売している企業の本社には見えない雰囲気。実際あのオフィスで働いているのも1−2人がせいぜいかも、というような外観だった。