何のための男女共同参画なのか?:男女共同参画局とのFacebookでのやりとり

男女共同参画局が、公式Facebookページを先月末に開設した。
ものすごく充実した内容を期待していたわけではもちろんないが、情報収集はできるかと思って、早速私もフォローしてみた。

そして、3月8日、国際女性デーについての、以下の男女共同参画局によるポストを読んだ(FBが見られる方用リンクはこちら。)

今日、3月8日は国連が定める「国際女性の日」です。

 国連では、1975年より3月8日を「国際女性の日」と定め、「女性たちが、平等、安全、開発、組織への参加のための努力により、どこまで可能性を広げてきたかを確認すると同時に、今後のさらなる前進に向けて話し合う場として設けられた記念日」としています。

 この大切な日に寄せて、森まさこ内閣府特命担当大臣男女共同参画)が、メッセージを出しました。

 森大臣のメッセージは、下記URLよりご覧いただけます。
http://www.gender.go.jp/movement/20130308a.html

私はこの森大臣のメッセージにかなりびっくりし、大きな疑問をもった。そこで、同日、以下のコメントをつけてみた。

山口智美: 森まさこ大臣のメッセージ、男女共同参画を推進するのは「日本経済の再生のみならず、東日本大震災からの復興、国際的な日本の貢献など、様々な課題への対応」、さらに「日本の繁栄に必要な人材の確保」など、女性を労働力としてしか考えていないかのようです。そもそもの「国際女性の日」の意味とは全く別方向であり、性差別の撤廃や女性の人権という根本的な目的はどこへいってしまったのかと、衝撃を覚えました。このようなメッセージを、大臣、そして男女共同参画局が推進しておられることにも、根本的な問題を感じずにはいられません。

この後、男女共同参画局からのレスがないまま3日がすぎた。そして、日本時間の3月11日朝、斉藤正美(id:discour)さんが以下のようなコメントをつけた。

斉藤正美: 男女共同参画の推進に、性差別の撤廃や女性の人権が入っていますよ、という力強いコメントをご担当者様からいただけるととても安心します。よろしくお願いします。

私も続けて催促ポスト。

山口智美:  私も何らかのコメントをご担当者様からいただけるかと思っておりました。ぜひよろしくお願いいたします。

すると、3月11日夕方、男女共同参画局から以下の返答があった。

Yamaguchiさん、斉藤さん、コメント頂きありがとうございます。
政府では、「政策方針過程への女性の参画の拡大」、「女性に対する暴力の根絶」など、15の重点分野を掲げ、第三次男女共同参画基本計画(http://www.gender.go.jp/kihon-keikaku/3rd/index.html)に基づき、男女の人権の尊重という観点から、男女共同参画社会の実現に向けた取り組みを進めています。
この場を通じて、様々な取り組みをご紹介して参ります。
今後ともよろしくお願い致します。

だが私は、このいかにも官僚的な、ある意味予想通りだった返事に満足できず、再度の質問をしてみた。これが日本時間の3月12日火曜日である。

山口智美:ご担当者様、お返事を有り難うございました。お時間をおとりいただきお返事をくださったことに感謝申し上げる反面、第三次基本計画に基づき取り組まれるというのは当然のことであるのでしょうし、とても行政による模範解答的な、ポイントをずらされたお返事であることに、残念さも感じます。そこで、再度お伺いさせてください。まず第一に、森大臣のメッセージが、女性を国のための労働力としてしか捉えていないように思われる問題については、そうではないと考えてもよろしいのでしょうか。第二に、性差別の撤廃について、女性差別撤廃条約を批准している日本政府としては当然ながら真っ先に考え、政策の柱におくべきことかと考えておりますが、その点、男女共同参画局としても、また担当大臣としても、最重要と考え、性差別を撤廃のむけての取り組みを重点的に進められるという理解でよろしいでしょうか。「男女共同参画」とは、「日本経済」や「日本の繁栄」のために女性を労働力として活用することを優先することではないと考える私としては、意図に疑問を感じてしまった大臣のメッセージでした。そのあたりをわかりやすくご解説いただけると助かります。よろしくお願いいたします。

さらに、斉藤さんの質問も、同日ポストされた。

斉藤正美: ご担当者さま、お返事ありがとうございました。
森まさこ大臣のお言葉の中に、「強い経済」「日本経済の再生」「日本の繁栄」などが繰り返し出てきておりますために、「女性活躍」「男女共同参画」という名のもとに女性を日本の繁栄のための労働力として活用するというメッセージとも受け止められかねないことを危惧しました。その歯止めとしても、「性差別をなくす」というベクトルの政策は不可欠のものと存じます。
リンクとしてあげてくださった基本計画の「基本的な方針」でめざすこととして挙げられているのは、要するに、1)性別役割分担意識をなくす、2)男女の人権尊重、3)多様性と活力ある社会、4)国際的な評価を得られること、の4点にまとめられるかと思われます。
これらの施策を根拠づけているはずの男女共同参画社会基本法では、第3条に、「性別による差別的取扱いを受けないこと」という条文が入っています。また、そうした差別的扱いを含めた「男女間の格差を改善するため」に「積極的改善措置」をとることができると明文化されています。しかしながら、こうした根拠法であるはずの基本法の条文「性別による差別的取り扱いを受けないこと」を実質化することが、基本的な方針から抜け落ちているように見えるのですが、この点、どうなのでしょうか。教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

日本時間の3月15日現在、これらの質問への回答は男女共同参画局のFB担当者からはきていない。ちなみに、上記の質問をして以降、男女共同参画局は2つの新たな記事をポストしている。

まあ、男女共同参画局FBページの中の人にとってみたら、なんという面倒くさい人たちがコメントで粘着してきたのか、という気分だろうとは思う。官僚的なレスも、おそらく部署で相談の上出したものなのだろうし、その面倒をかけていることには少々悪いなという気もしないわけではない。でもやはり、政府機関として、大臣の挨拶に関する質問が一般市民からでて、それに答えずスルーというのはどうなのかと思う。

そして、この質問がスルーされているのはなぜかを考えざるをえない。スルーされている質問の内容というのは、すなわち、男女共同参画の目的は「性差別をなくす」ことではないのかを問うているからだ。男女共同参画局は、女性差別撤廃条約にも、男女共同参画社会基本法にも書かれている、「性差別をなくす」ということを、男女共同参画の目的だと言えないのだろうか。そして実際のところ、森大臣の挨拶文からは、むしろ「男女共同参画」とは「日本経済の再生」「日本の繁栄」などのために女性を労働力として活用することが第一義的な目的だ、というメッセージが強く伺えてしまう状況だ。

この現状には、危機感を感じざるをえない。今だからこそ、「何のための男女共同参画なのか」を、もう一度、根本から問い直していく必要があるのではないか。