バックラッシャーと「日本刀」の「ストーリー」構築

女性学会レポの一部だが、これだけファイトバックネタが絡んでいるので別項目にしておく。
会からお二人会場にいらしていた。お一人(代表の方)は、イダさんが話すと「そうだ!」とか「イダさん頑張って!」とかかけ声かけており、なんかすごい勢い。でもいかにもファイトバックの会的なノリでもあるんだよな。あれがああいう、自分たちのホームとはいえないコンテクストの集会で効果があると考えているのがなんというか、、やっぱり「第三者」からのまなざしにあまりに鈍感としか言いようがない。(この「第三者からのまなざしへの鈍感さ」については、先週の大阪「フェミニズムとインターネット問題を考える」研究会のときもだいぶ指摘したのだが、やっぱり変わらないなあ。大阪研究会にも会からはおひとりいらしており、やはり同じようなノリでご発言を繰り返され、かなりの時間をとられたのだった。そういった場で、何も知らない人にどういう印象を(会について)与えるか、もうちょっと考えた方が、、、と今は人ごとなれど、以前自分も深く関わった会だけに、かなり残念に思ってしまったのだった。

その会の代表の発言は、基本的に裁判およびF会の宣伝。私につっこみいれたい感じはあったけれど、私がひどくシンプルなレスしたら、それでつっこみ自体は終わってしまったよう。で、彼女は、id:cmasakさんがブログでレポートしていたような、「バックラッシュ勢力から、密室で日本刀をだされて恫喝された」みたいな話をしたのだった。

おそらくこれは、裁判書面−おそらく原告陳述書からとってきた話の可能性が高いだろうとピンときた。たぶん、私はこの裁判の書面の類いを会の人(世話人含む)たちの大部分より読み込んできたと思う。(とくに原告陳述書に関しては、その配布に関してちょっと会の中でもめたこともあり、細かく読んだ。)でもしばらく陳述書は読んでいなかったから、この代表発言に「何か違うぞ」とひっかかりを感じながらもその場では確信できなかったので言わなかったが、帰ってきてから陳述書原本(会が売っているものではない、裁判所提出版)を読んで確認してみた。

実際の陳述書の記述は以下のようなもの。(個人名はアルファベットに変えています。)

(yamtomによるコンテクスト解説:数人といっしょにいわゆる「バックラッシュ派」K議員によびだされた原告。部屋にはほかにも数人の市民(K議員側)たちがいる状況。「市民」たちがいろいろ要求を伝える。)

「時々、K議員が大きな声で口をはさみました。市側は、だれも抗弁しませんでした。私も、じっと聞いていました。夜9時半を回った頃、「いったいどうなんだ!」「(市は)帰れよ!」と怒鳴りながらテーブルをバーンと強打した時は、さすがにギクリとして心臓がドキドキ鼓動するのがわかりました。(途中略)
男女共同参画推進課のある人権文化部の部屋にもどったら、N人権文化部次長(兼人権文化まちづくり推進室長)が一人残っていました。市の人たちがあらましを報告し、私が、K議員がテーブルをバーンとたたいて脅したことを話すと、N次長は「ここまで聞こえた」と言い、「以前は刃物を前において恫喝したこともある」と刃渡りを示すジェスチャーを交えて私に告げました。」


昨日のフロア発言者(ファイトバックの会代表)の話だと、誰かがひとりでよびだされ、密室で日本刀で恫喝されたようなストーリーという印象だったが、「密室」であるともとくに書いていないし、複数名が部屋にいる中で(しかも(そのときには少なくとも)原告側にたっていたことになっていた市側の人たちもいる中で)起きたことだ。刃物も「日本刀」とは書いておらず、ばーんと机を叩いたときと、「刃物」が前におかれたときは別の時のことだ。そして「刃物」の話自体が原告の又聞きである。そもそも、フェミニズムへの「バックラッシュ」というコンテクストで「刃物を前において恫喝」が行われたかもわからない。

書面に書いてあるストーリーと、少しずつずれていっており、結果としてやたらとおおげさな「フェミニズムに対するバックラッシュ勢力はおそろしい」という話になっている。「もちろん刃物を前において恫喝」が怖くないと言っているわけではないし、それは問題であることは確かでもあるのだけれど、こうやって、昨日チキさんの言った「(バックラッシュに関するフェミ側の)ストーリー」がつくられていくんだ、というよい事例となってしまっていたのだった。