WAN政党アンケート「ジェンダー」項目の問題と政党からの回答

前回エントリで指摘した、WANによる政党アンケートの「ジェンダー」に関する質問の問題。設問はこうなっている。

(3.2)「ジェンダー」という言葉や概念の使用についてお尋ねします。行政文書や学校教科書などでの「ジェンダー」という用語の使用禁止、「ジェンダー」に関する書籍の公立図書館からの排除といった動きがみられますが、貴党はどのようにお考えでしょうか。いずれかを〇で囲み、併せてその理由もお書きください。

 1.「ジェンダー」排除は正しいので支持する。
    理由:


 2.「ジェンダー」排除は言論弾圧なので取り締まる。
    理由:


前回エントリに、私はこう書いた。

(3.2)の「ジェンダー」という言葉の使用云々の項目があるところに、このアンケートをつくった人たちのこの問題への関心度の高さと熱意が現れているようでもある。しかし「言論弾圧なので取り締まる」って、「取り締まる」主語は誰なんだろう?「貴党はどうお考えでしょうか?」なのだから、政党に取り締まれといっているのか、それとも国の政府?警察?政党って何かを「取り締まる」という団体ではないと思うしなあ。(っていうか「取り締まる」って言葉自体がなんかこわい。「言論弾圧」なので「取り締まる」っていう流れに違和感、というか。)

その後、twitterなどで知人とちょっと議論をしたりもしたのだが、やはり問題ありすぎる設問だろうということで同意となった。
この二択、どちらも答えようがないからだ。「排除は正しい」とするか、「取り締まる」とするか。どちらの選択肢を選んでも、批判されるしかない、という二択なのだ。

なんでこんな選択肢にしたのか意図が疑われるし、もしや何も考えず「取り締まる」がいいという感覚だったという可能性も高く、かなり怖いものがある。
この答えようがない設問に政党はどう答えるのか、ちょっと注目していた。

そして、今のところ、民主党国民新党共産党社民党から返事がきたらしいのだが、「検討中です。」という回答だった国民新党(こんな二択では「検討中」とせざるをえなかったのかも、とちょっと同情すらする)のほか、民主、共産、社民はどれも選択肢からは選ばず、第三の選択肢を自分たちで(それ用の欄も作られていないのに)つくるという回答だった。いわば、質問状をだしたフェミニスト側より、これら政党のほうがまだまともだった、という展開。

民主の回答

−(注記:〇はなし)
用語の誤解や一部の事例によるものと思われますが、男女共同参画政策全般に対する反動が生じていることは残念です。とりわけ学校教育の現場でようやく定着しはじめた、発達段階に応じた適切な性教育に対する批判は、学校現場での戸惑いを生み、正しい知識の普及をなお遅らせるのではないかと危惧されます。

共産


いずれにも○はつけず、以下を付記する。

 世界では、国連総会での「ジェンダー主流化」の重要性の確認もうけ、ジェンダー平等にむけた施策の策定、見直し、実行などがすすめられていれているところであり、これらは女性差別撤廃、男女平等実現のための積極的な流れだと考えています。
 日本では、ジェンダーという用語をめぐって、侵略戦争を肯定し、戦前の社会を「理想」のように考えて、国連女性差別撤廃条約の批准そのものを撤回させようとしている勢力が、 政府文書や地方の行政文書などから「ジェンダー」の文言の削除、図書の撤去などをもとめる攻撃をおこなってきたことは、世界の進歩・発展からの逆行もはなはだしく、また不当な攻撃だと考えています。
しかし、それへの対応は、取り締まることではなく、こうした民主主義、男女平等を否定する勢力を政界の中枢から排除することであり、国民の世論と運動で地域社会から孤立させていく大きなたたかいが大事だと考えます。

社民

○3.「ジェンダー」排除は言論弾圧であり、不当な弾圧をさせない。
 理由:「ジェンダー」という用語にかこつけた「男女平等叩き」であり、容認できない。

どこも、どうしようもない二択を外して回答している。民主のはちょっと意味不明だったりしているが、こういうときにはさすが共産党だと思った。本来、フェミニスト(しかも著名学者がそろっている)側が、既存政党をリードし、アジェンダを提案するようであってほしいのだが、逆にこの設問において、共産党に教え諭されるようなことになっている。「それへの対応は、取り締まることではなく」とはっきり書いているし。しかし、これは共産党がすごい、というわけでもなく、単におおもとの設問がおかしすぎるんだよな。

この設問のほかにも、最後の性的少数者の設問が、ほかの設問の細かな選択肢にくらべてまったくないも同然で、しかもほかの設問には見当たらない、「とくに政策を考えていない」という選択肢がトップの選択肢という状況があるし、そもそも社会学者(アンケート調査の専門家のはずの)があれだけたくさんそろっているはずの団体なのに、いくら何でもこのアンケートはないだろうと。フォーマットにしろ、内容にしろ、ちょっとこれはダメすぎなのではないだろうか。

そして、このアンケート調査出すのに、記名で出したのかなとか、責任者は誰なのかなとか、そもそもこんな選挙直前の時期にだして、小さい政党は大変だったのではないかなとか、いろいろ疑問があるのだった。

それと、アンケートは自民、民主、公明、共産、社民、国民新党に出したようだが、幸福実現党の回答もちょっと読んでみたかったかもー。(なんだか迷走真っ最中のようだから、出しても答える余裕なんかなかったかもしれないけれどね。)

(追記:エントリアップした後に、公明からの回答がアップされてました。やはり「ジェンダー」設問に関しては選択肢は選ばず。)