*[男女共同参画]性差別の撤廃が男女共同参画の目的といえない男女共同参画局:Facebookでのやりとりの続き

前回のエントリで、男女共同参画局とのFacebookでのやりとりを紹介した。斉藤さんや私の提示した「男女共同参画局や担当大臣は性差別を撤廃を最重要と考え、それにむけての取り組みを重点的に進めるのか」という問いについては、返事がないままになっていた。

最初はこのFacebookページで、メッセージへの対応をしていた男女共同参画局。斉藤さんや私のコメントにも対応していたことからもわかるし、その他の人たちのメッセージへの対応もあった。だが、その後、どうやらポリシーを変えてしまったようだ。

内閣府男女共同参画局Facebookページについて

なお、投稿への返信、メッセージへの個別の対応はいたしませんので、あらかじめご了承ください。

Facebookページでは、運営方針を定めています。この運営方針は、事前に告知なく変更することもありますのでご了承ください。

とのことである。
この説明の最初に、「Facebookページは企業や団体が情報発信や利用者との交流を図ることができるソーシャルユーテリティサイトです。」と書かれているが、どうやら男女共同参画局は「利用者との交流を図る」ことはやめてしまったらしい。

そこで、私が男女共同参画局のポストに対して以下のようなコメントを書き、それに斉藤正美さんも続けてコメントを書いた。(該当FBページはこちら。)

山口智美:いつの間にか、FBページの運営方針が変わり、コメント、メッセージへの対応はされなくなったのですね。最初のうちはされていたのに、この変更は大変残念です。インタラクティブなページ運営をされることを期待していたのですが。http://www.gender.go.jp/sns/facebook.html

斉藤正美:わたしたちって、「いいね」だけ期待されているのかしら?  それだったら、HPと何が違うのでしょうか。
広報紙やチラシ、HPとは違うfacebookというSNSタイプに移行されたのに、そのリアルタイムでの双方向性という特徴を自らなくすのであれば、facebookで発信する意味はどこにあるのでしょうか。

この後で、遠山日出也さんも、回答を求めるコメントを残している。さらに、斉藤さんと山口のコメントについて、「何のための男女共同参画行政なのか」「根本に、性差別の撤廃が座っているのか」という基本的な問いであり、国会で質問されてもおかしくない重要性を持っていると思うのです。」と述べ、投稿への個別対応はしないという方針を改めるべきだと書かれている。(遠山さんコメントの全文については、FBページを参照。)

遠山さんが書かれた「国会で質問されてもおかしくない重要性」という言葉にははっとさせられた。まったく同感である。日本政府は「女性差別撤廃条約」を批准しており、さらには「男女共同参画社会基本法」には「性別による差別的取扱いを受けないこと」と書かれている。にもかかわらず、「性差別を撤廃する」ことが「男女共同参画」の目的である、という一言を避け、Facebookへのコメント対応までやめてしまうというのはどうしたことなのだろうか。

何のための男女共同参画なのか?:男女共同参画局とのFacebookでのやりとり

男女共同参画局が、公式Facebookページを先月末に開設した。
ものすごく充実した内容を期待していたわけではもちろんないが、情報収集はできるかと思って、早速私もフォローしてみた。

そして、3月8日、国際女性デーについての、以下の男女共同参画局によるポストを読んだ(FBが見られる方用リンクはこちら。)

今日、3月8日は国連が定める「国際女性の日」です。

 国連では、1975年より3月8日を「国際女性の日」と定め、「女性たちが、平等、安全、開発、組織への参加のための努力により、どこまで可能性を広げてきたかを確認すると同時に、今後のさらなる前進に向けて話し合う場として設けられた記念日」としています。

 この大切な日に寄せて、森まさこ内閣府特命担当大臣男女共同参画)が、メッセージを出しました。

 森大臣のメッセージは、下記URLよりご覧いただけます。
http://www.gender.go.jp/movement/20130308a.html

私はこの森大臣のメッセージにかなりびっくりし、大きな疑問をもった。そこで、同日、以下のコメントをつけてみた。

山口智美: 森まさこ大臣のメッセージ、男女共同参画を推進するのは「日本経済の再生のみならず、東日本大震災からの復興、国際的な日本の貢献など、様々な課題への対応」、さらに「日本の繁栄に必要な人材の確保」など、女性を労働力としてしか考えていないかのようです。そもそもの「国際女性の日」の意味とは全く別方向であり、性差別の撤廃や女性の人権という根本的な目的はどこへいってしまったのかと、衝撃を覚えました。このようなメッセージを、大臣、そして男女共同参画局が推進しておられることにも、根本的な問題を感じずにはいられません。

この後、男女共同参画局からのレスがないまま3日がすぎた。そして、日本時間の3月11日朝、斉藤正美(id:discour)さんが以下のようなコメントをつけた。

斉藤正美: 男女共同参画の推進に、性差別の撤廃や女性の人権が入っていますよ、という力強いコメントをご担当者様からいただけるととても安心します。よろしくお願いします。

私も続けて催促ポスト。

山口智美:  私も何らかのコメントをご担当者様からいただけるかと思っておりました。ぜひよろしくお願いいたします。

すると、3月11日夕方、男女共同参画局から以下の返答があった。

Yamaguchiさん、斉藤さん、コメント頂きありがとうございます。
政府では、「政策方針過程への女性の参画の拡大」、「女性に対する暴力の根絶」など、15の重点分野を掲げ、第三次男女共同参画基本計画(http://www.gender.go.jp/kihon-keikaku/3rd/index.html)に基づき、男女の人権の尊重という観点から、男女共同参画社会の実現に向けた取り組みを進めています。
この場を通じて、様々な取り組みをご紹介して参ります。
今後ともよろしくお願い致します。

だが私は、このいかにも官僚的な、ある意味予想通りだった返事に満足できず、再度の質問をしてみた。これが日本時間の3月12日火曜日である。

山口智美:ご担当者様、お返事を有り難うございました。お時間をおとりいただきお返事をくださったことに感謝申し上げる反面、第三次基本計画に基づき取り組まれるというのは当然のことであるのでしょうし、とても行政による模範解答的な、ポイントをずらされたお返事であることに、残念さも感じます。そこで、再度お伺いさせてください。まず第一に、森大臣のメッセージが、女性を国のための労働力としてしか捉えていないように思われる問題については、そうではないと考えてもよろしいのでしょうか。第二に、性差別の撤廃について、女性差別撤廃条約を批准している日本政府としては当然ながら真っ先に考え、政策の柱におくべきことかと考えておりますが、その点、男女共同参画局としても、また担当大臣としても、最重要と考え、性差別を撤廃のむけての取り組みを重点的に進められるという理解でよろしいでしょうか。「男女共同参画」とは、「日本経済」や「日本の繁栄」のために女性を労働力として活用することを優先することではないと考える私としては、意図に疑問を感じてしまった大臣のメッセージでした。そのあたりをわかりやすくご解説いただけると助かります。よろしくお願いいたします。

さらに、斉藤さんの質問も、同日ポストされた。

斉藤正美: ご担当者さま、お返事ありがとうございました。
森まさこ大臣のお言葉の中に、「強い経済」「日本経済の再生」「日本の繁栄」などが繰り返し出てきておりますために、「女性活躍」「男女共同参画」という名のもとに女性を日本の繁栄のための労働力として活用するというメッセージとも受け止められかねないことを危惧しました。その歯止めとしても、「性差別をなくす」というベクトルの政策は不可欠のものと存じます。
リンクとしてあげてくださった基本計画の「基本的な方針」でめざすこととして挙げられているのは、要するに、1)性別役割分担意識をなくす、2)男女の人権尊重、3)多様性と活力ある社会、4)国際的な評価を得られること、の4点にまとめられるかと思われます。
これらの施策を根拠づけているはずの男女共同参画社会基本法では、第3条に、「性別による差別的取扱いを受けないこと」という条文が入っています。また、そうした差別的扱いを含めた「男女間の格差を改善するため」に「積極的改善措置」をとることができると明文化されています。しかしながら、こうした根拠法であるはずの基本法の条文「性別による差別的取り扱いを受けないこと」を実質化することが、基本的な方針から抜け落ちているように見えるのですが、この点、どうなのでしょうか。教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

日本時間の3月15日現在、これらの質問への回答は男女共同参画局のFB担当者からはきていない。ちなみに、上記の質問をして以降、男女共同参画局は2つの新たな記事をポストしている。

まあ、男女共同参画局FBページの中の人にとってみたら、なんという面倒くさい人たちがコメントで粘着してきたのか、という気分だろうとは思う。官僚的なレスも、おそらく部署で相談の上出したものなのだろうし、その面倒をかけていることには少々悪いなという気もしないわけではない。でもやはり、政府機関として、大臣の挨拶に関する質問が一般市民からでて、それに答えずスルーというのはどうなのかと思う。

そして、この質問がスルーされているのはなぜかを考えざるをえない。スルーされている質問の内容というのは、すなわち、男女共同参画の目的は「性差別をなくす」ことではないのかを問うているからだ。男女共同参画局は、女性差別撤廃条約にも、男女共同参画社会基本法にも書かれている、「性差別をなくす」ということを、男女共同参画の目的だと言えないのだろうか。そして実際のところ、森大臣の挨拶文からは、むしろ「男女共同参画」とは「日本経済の再生」「日本の繁栄」などのために女性を労働力として活用することが第一義的な目的だ、というメッセージが強く伺えてしまう状況だ。

この現状には、危機感を感じざるをえない。今だからこそ、「何のための男女共同参画なのか」を、もう一度、根本から問い直していく必要があるのではないか。

『社会運動の戸惑い』読書会@関西学院大学(12月16日)

金明秀さんと山田真裕さんのご尽力で、関西学院大学にて12月16日に、『社会運動の戸惑い』読書会を開いていただけることになりました。著者の斉藤正美と私も参加させていただきます。楽しみです。

日時:12月16日(日)2:30-5:00pm
場所:関西学院大学社会学部棟3階セミナールーム
書評コメント 山田真裕さん(関西学院大学法学部)、金明秀さん(関西学院大学社会学部)
レスポンス 斉藤正美(富山大学)、山口智美モンタナ州立大学社会学・人類学部)
フロア含めた自由討議

詳細は近日中に、関西学院大学先端社会研究所のサイトにも掲載予定です。
また、「フェミニズムの歴史と理論」サイト内の『社会運動の戸惑い』特設ページにおいても掲載していきます。

今後も、読書会などの情報がはいりましたら、掲載していけたらと思っています。

『社会運動の戸惑い』がいくつかの媒体で紹介されました。

10月末に発売された書籍社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動ですが、発売2週間で増刷決定。今のところ売れ行き順調、とのことです。

いくつかの媒体でも紹介されはじめています。最初にご紹介いただいている媒体がなんだか濃過ぎるぞ!でもこれも、この本ならでは、の媒体ともいえ、ご紹介いただけるのは有り難いことです。これら媒体の読者の方々にも是非お読みいただけたらと思っております。とくに「フェミナチを監視する掲示板」での議論の展開は注目しています。

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

『社会運動の戸惑い』ついに発売!&座談会後半公開

『社会運動の戸惑い』、ついに今日、発売となりました。アマゾンでも売り出したようです。(まだ本の写真出てないけど...早く出ないかしら。。)

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

楽天のほうは本の写真も出ています。

そして、発売を記念して、共著者二人と小山エミさんと行った座談会、前・後編ともに公開されました。

この座談会を掲載していただいた「『バックラッシュ!』発売記念キャンペーン跡地」ブログは、この『社会運動の戸惑い』本の企画の原点となった場所でもあります。そんなわけで、なんと4年ぶりの更新となるこのブログに、あえて、この座談会をご掲載いただきました。小山エミさんには大変お世話になりました!エミさんありがとう。

『社会運動の戸惑い』本のご感想など、ツイッターハッシュタグ#tomadoiのほうにもぜひよろしくお願いいたします。
ステマも大歓迎!ww

『社会運動の戸惑い』発売記念の座談会

10月31日に、ついに発売となります。

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

そんなわけで、超久々に「バックラッシュ!発売記念キャンペーンブログ」がいきなりの復活!
『戸惑い』本発売記念の座談会(別名ステマ大会w)を、荻上チキさん、小山エミさん、斉藤正美さんという、これまたなつかしのメンバーで行いました。その前編が掲載されましたので、お知らせします〜。後編は明日掲載。

山口智美・斉藤正美・荻上チキ著『社会運動の戸惑い』発売記念・ステマ大会(ウソ【前編】

『戸惑い』本用のTwitterハッシュタグもできましたよ。 #tomadoi

中ピ連を再評価する

フェミニズムの歴史と理論」に、斉藤正美さんと私による、中ピ連関連の2つのエントリをアップしました。

これまで、女性学ジェンダー学界隈では、批判的に語られることのほうが多かった中ピ連。もちろん批判されるべきところも多々ある運動ではあったのだろうが、評価すべき点もあるのではないか。斉藤さんもエントリで書いていますが、大宅壮一文庫の文献目録で、どのフェミニストよりも、群を抜いて記事数が多いのが「中ピ連」のリーダーだった、榎美沙子さんでした。マスコミ上でこれだけ集中的に報道されたフェミニスト、およびフェミニズム団体は、後にも先にも榎さんおよび中ピ連だけなのではないでしょうか。さらに、いまでも、ピンクヘルメットのイメージは多数のひとの記憶に残ってもいます。

中ピ連の運動について、功罪ともにもっと考えてみてもいいのではないか、そんな思いで書いてみました。そして、中ピ連のみならず、他にも本当にたくさんあった、様々なウーマンリブ運動団体についても。

フェミニズムの歴史と理論」には、今後もぼちぼちペースではありますが、フェミニズムの歴史についてのエントリをアップしていく予定です。
さらに、もう少し発売が近づいてきたら、『社会運動の戸惑い』本のもう一つの柱である、草の根保守運動に関しても少しずつ書いていくかも。。ということで、久しく放置してしまっていた「フェミニズムの歴史と理論」サイトも更新再開していますので、ぜひご覧下さい。

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動

社会運動の戸惑い: フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動