すてっぷ裁判を傍聴して

id:discourさんがすでに詳細なレポをアップし、コメント欄での議論も盛んに行われている。裁判当日以来地方めぐりをしていたので時間がとれなかったのだけれど、遅ればせながら、私が思った点などについて書き留めておきたい。(詳しい当日の様子については、斉藤さんのレポをご参照ください。)

公判後の弁護士解説つき交流会で、私も質問してみた。内容は:一審では豊中市男女共同参画条例を通すかわりに三井さんを雇い止めにするという密約があったという議論を原告側はしていたのだけれど、それには十分な証拠があったとは思えず、議論にも正直いって説得力に欠けており、事実一審も敗訴となった。今回の交流会でも、先ほど「密約」という言葉がまた出てきたのだが、今回二審でこの密約説を裏付けるための新しい証拠などを提示するようなことになるのか、それとも議論の展開を変えるのか、というものだった。それに対し、寺沢勝子弁護士は「密約なのだから、証拠があるはずはなく、状況証拠しかない」というお答えだった。

そもそもなぜ、証拠もなく、状況証拠も不十分だと思われる「密約説」を一審の議論に弁護団は用いたのだろうか。「密約説」に関して、寺沢弁護士ら弁護団がどのように再度議論を構築し、一審判決をひっくり返していくのか、それとも「密約説」はもう使わないというのか、残念ながらよくわからなかった。

もう一点、斉藤正美さんが言及された、管理職とヒラの非常勤との違いについてどう法的に考えるのかという質問について、私の意見も述べた。この問題は法的にどう考えるかという点もあるが(斉藤さんのブログに詳しく書かれている、脇田氏のすべての人が労働者、といういわば理想主義的な議論では、一審判決をひっくり返すにはあまりに弱いと私も思う)、それに加えて、運動としてどうアプローチするかも重要ではないだろうか、と発言した。三井さんは「名ばかり管理職」である、という解釈もあり、月30万ほどというのは管理職の給与ではないという主張もある。だが、同時に週に3日ほどの勤務で月30万円というのは、ほかの末端非常勤職員にくらべたら破格の待遇であるというのも事実で、この点をしっかり受け止め、言及していかないと、運動として一番重要である、非常勤職員の方々の支援につながらないのではないかと思うからだ。実際、センター非常勤の方々から、「三井さんの状況と自分たちの状況は違いすぎる気がする」から積極的に支援することにしり込みする、というようなことも時々聞く。ただひたすら「皆が労働者」だとか、「女性すべての問題」というだけで、その中にある差異についての言及を避けたままでは、通じないのではないか。この点、支援者団体として目をつぶることなく、しっかり捉えなおさねばならないことだと思う。

今回の控訴審では、原告側は「人格権の侵害」ということを新たに主張していくのだという。これについても実は質問をしたかったのだが、時間がなくできなかった。何をもって「人格権が侵害された」というのか、その基準は何なのか、誰かが仕事から解雇されれば、「人格権が侵害された」と思うことも少なくないだろう。それを違法である、とまで言うのは、どういう議論を具体的にたてていくのか。このあたりは次回以降の法廷で明らかになっていくのかもしれないので、注目したい。

ファイトバックの会の世話人の方々は本当に準備などに時間を費やしていて、当日サックスの支援コンサートをされた、私の友人でもあるMASAさんのお仕事も私は本当に尊敬しているのだけれど、それでももう少し、当日に支援者間で裁判の具体的内容についての議論ができる時間を増やしてもらえたらな、、という感想をもった。今回はコンサートも組まれていたので特別で、普段はもっと議論の時間もあるという説も聞いたが、そうであることを願いたい。支援者からの質問といっても、自分たちの経験を言ったり、運動的にアジるような発言のほうが、具体的に裁判の内容に突っ込む発言より目立っていた。もっと支援者間で、裁判の内容に関して勉強し、議論をする機会をもつべきではないかと思った。あの場でいただいた準備書面や意見書なども、家に帰って熟読する人たちもいるかもしれないが、おそらくしないでそのまま、、という人たちが大部分なのではないか。少人数でもいいから、裁判の内容を弁護団と一緒になって議論し、時には意見も言えるような関係ができたらいいなと思う。残念ながら今回は、斉藤さんも指摘されているが、弁護団のご意見を一方的に拝聴し、支援者は質問させていただく立場、という位置づけになってしまっていたように思う。

何か意見を言うと、「(原告側の)書面を読んでいないのではないか」「書面を読め」ですまされてしまう傾向や、ほとんどの人たちが原告側の書面しか読んでいない現状もどうなんだろうか。私はたまたま被告側のいくつかの書面にも目を通す機会があったが、大部分の支援者は読んでいないと思う。自分たち側の主張のみしか読んでいない状況では、有効な支援はできないのではないだろうか。。