梶川ゆきこ広島県議のtwitterやブログでの一連の発言に関して

モンタナに住む私にとって、この数日間、朝おきたらすぐ梶川ゆきこ広島県議のtwitterやブログでの発言に仰天してツイートするところから一日が始まっている。しかも、梶川議員が書く内容がどんどんひどくなってきている。

とりあえず事の展開は以下にて。


Togetter「梶川ゆきこ広島県議の「妻が家庭で夫に優しくすればセクハラは減る」発言について」

Togetter 梶川ゆきこ広島県議の「妻が家庭で夫に優しくすればセクハラは減る」発言についての弁明とその後の反応

「セクハラを許さない環境を作ろう!」 梶川ゆきこ☆蝶々の随想記☆

「ハラスメント(嫌がらせ)を許さない環境を作ろう!」梶川ゆきこ☆蝶々の随想記☆



twitterでの梶川県議のもともとの問題発言とそれへの反響や批判は、Togetterを見れば一目瞭然なのでそれをご覧いただけたらと思う。批判がきてからの梶川議員の度重なる問題ツイートがあった後、いわゆる「釣り発言」を梶川議員がツイートした。真剣に答えていた方々も多くいたというのにいきなりの「釣り」宣言は最悪のパターン。そして、watarlooさんや私が、いったいどのツイートが梶川議員ご本人のご意見で、どのツイートが誰か他の人の意見なのかなどと聞いてみても、答えはないままとなっている。

そんな中書かれたのが、梶川議員による二つのブログエントリ。「セクハラを許さない環境を作ろう!」のほうは、「非正規雇用の女性たちの服装はカジュアルでミニスカートやショートパンツをはいており」、「セクハラで泣き寝入りしなくてもいい社会にするために、政治はあるのに…彼女たちに議員の存在など目にも留まっていません。」とくる。街頭で立っているだけでどうやって正規、非正規と区別がつくのかも謎だし、何着ようがその人の自由でしょうに。

そして、実名でツイートするフェミニストが少ないといい、「ジェンダー・バッシングの嵐が過ぎるのを静かに待ち望んでいたフェミニストの方々も多かったのではないでしょうか?」「フェミニストの方々には、実名で恐れず、ひるまず、フェアな言論活動を期待します。....立派な内容の主張であっても、匿名でしか言えないことなのだろうか?と私は思います。.....日頃、研究している内容・成果を実名で言えないところが、日本のフェミニズムの問題だと私は思います。」などと、いかにも実名で正々堂々と議論している自分に対し、「匿名でフェアな議論をせず、ジェンダーバッシングにはひるんでいた」という「フェミニスト」像をつくりあげ、それをもとに自分への批判をしてきた(匿名の)人たちが卑怯である、というような批判をしているかのようだ。いやはや。実際実名で批判していた人たちもいたし、職場などの関係から、実名だしたくでも出せない状況の人だっているだろうに。セクハラ被害者だってDVサバイバーだって、ネット上で実名出したくない場合だってあるだろう。もともとセクハラについて語っていたはずなのに。

そもそも彼女が議員になったという2007年には、すでに「ジェンダーバッシング/バックラッシュ」は落ち着いてきていた時期である。地方議会でも一番大変だったのはその前の時期のはずだ。女性議員の少ない広島県議会で苦労があるであろうことはわかるが、「自分ばかりが闘ってきたのだ」というような解釈にも無理がある。

そして今日のエントリ。ますますすごい展開である。今度は前回の「ミニスカートの若い女性」や「匿名フェミニスト」という仮想敵ではなく、新たな「男性フェミニスト」という仮想敵が登場してきた。

セクハラに関する私のツイートに関しても、意図的に人に不快感を与えるサイトを作り、「痛い発言」云々というのも個人に対するハラスメントです。

セクハラ問題に本当に敏感な人々(紳士・淑女)であれば、少なくとも、個人を吊るし上げるようなハラスメント・サイトは作らないと思います。

と、おそらくTogetterまとめサイトをつくったwatarlooさんらを批判しているようだ。(「紳士・淑女」という表現もすごいな。)そしてその後以下のような記述がある。

特に、フェミニスト論議の中に「わかってない男性」が乱入してくると、大体、感情的になり、論議がメチャクチャになりがちです。....一部の男性フェミニスト?に見受けられる批判論者は、少数の女性議員の批判をして足を引っ張るぐらいなら、自分が議員に立候補して、問題解決すればいいでしょう!と私は思います。....女性議員を口汚く罵る、「困った男性フェミニスト」は、要するに、自分を世の中で認めてもらいたくて、男女平等論者達に近づき、利己的に利用しようとしているだけにしか私には見えません。本当に人の痛みのわかる紳士的なフェミニストであれば、「痛い議員」だとかネット上でハラスメントをするサイトを作り、ツイッターでいきなり無礼な言葉づかいでメールを送ってきたりはしないと思います。

今度は「男性フェミニスト」という仮想敵の登場となったわけだが、議論の展開からみると、watarlooさんのことを暗にさしているように読めるが、実際記載されていることは、梶川議員の空想でしかすぎず、それをもとに人格批判といってもよいレベルのバッシングを行っている。

そして、ご自分のことを「少数派の(力もない)女性議員」と呼ぶのだが、少数派だから、女性だから県議であるにもかかわらず「力が無い」と言い放つのは、自らのもつ権力性に無自覚であることの表明としか思えない。

そして、自分に対する批判を「ハラスメント」だというのだが、こういった自分ばかりが被害者だという立場をとるのは問題だと思う。おそらくこれは「少数派の(力もない)女性議員」という認識ともつながってくるのだろうが。そして、ご自分の「釣り」宣言や、今回のエントリのような「男性フェミニスト」および(どうやら彼らに惑わされているらしい)そのほかのフェミニストたちに対して、具体的な批判をするのではなく、決めつけの論理に従って、ほとんど誹謗中傷といってもよいレベルのエントリはハラスメントではないというのだろうか。

そして、県議の公式ブログにこういうエントリを掲載してしまうというところで、すでに議員としてのストラテジー上まずい、という計算くらい働かないものなのか、、と頭が痛い。

一連の展開、まだ続くのかもしれないが、問題を複雑にしているのが、梶川議員の経歴をみると、女性運動畑を背景にして政界にでてきた方のようであり、フェミニスト議員連盟や、「地方議会に女性を送る会」といった運動体などを背景として活動してきた人らしいといことだ。先日、「能天気すぎる「女性議員をふやそう」運動」エントリをアップしたばかりだったが、まさにこの「女性議員をふやそう」運動からでてきた議員さんのひとりが梶川議員なのだ。
最近まで女性ゼロ議会状態が続いた広島県議会に女性議員が現在3人(民主系梶川議員のほかは、自民、公明系のようだ)いること自体は喜ばしいことだ。しかし、もはや女性議員の人数だけを問うことの限界をひしひしと感じる一件だった。「女性だったらだれでもいい」わけではない。そしてよくいわれる「ジェンダーの視点」なるものも、人によっておそらく様々に解釈されていることだろう。

梶川議員の「実効性のあるセクハラ対策を」という思い自体は本当にわかるだけに、この根本的なレベルでの齟齬がなんとかならないものか、こういったことを議論できる場がないのではないかと考えさせられることにもなった。

また、「Web上で非営利活動(女性問題)のサイトを運営」ということが政界入りへのきっかけとなったという書かれ方がしているのをみても、ネットに慣れている自分、といった自信をもたれている可能性も感じる。どうみても、一連の展開をみると、炎上するべくしてなったとしか思えず、ネットにむいていないのではないかと思えてしまうのだが、ご本人の認識は逆なのかもしれない。あるいは、ネットで批判がきたら、それは「バックラッシャー」や「足を引っ張る人たち(フェミニスト含む)」たちの仕業と脳内変換されてしまい、その批判を真正面から捉えようということにはつながらないのかもしれない。議員のネット利用として、これは相当にまずいのではないか。

当ブログで何度も問うてきた、ファイトバックの会のネットでの失敗、そのデジャヴュをみる思いでもある。「仮想敵」をつくってバッシングすること、批判はひたすら拒絶してしまうこと、そして自らの発信が「外」にどのように見え、それが広がっていくのかについて考えが及んでいないことなどなど、枚挙にいとまがない。女性運動やフェミニズムにおけるネットの問題をもっとしっかり検証していく必要があるのではないかと思った。

長くなってきたので今回はこのへんで。また展開があったらなんか書くかも。